相次ぐリコールで、危機にあるサムスン(後)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
それだけではない。サムスンはこれまで、アンドロイド陣営を代表する会社であった。言い換えれば、アンドロイドのフラッグシップである。だが今回の事態を受けて、アンドロイドのフラッグシップの座を奪おうとする動きもある。
それは、グーグルの「Pixel」の登場である。価格はiPhoneと同じ価格帯で、仕様は最高レベルであると宣伝されている。アンドロイド陣営を代表するのは、これからは「Pixel」だと言わんばかりである。なお、今回のリコールおよび販売中止で、サムスンSDIも大きな打撃を受けることは間違いない。サムスンSDIは次世代の成長エンジンとして、バッテリー事業を推進してきた。ところが、今回のリコール事件は、サムスンSDIの企業イメージを著しく傷つけたことは言うまでもない。その結果、サムスンSDIは今後もっと大きな成長が期待されている自動車市場での競争に、ハンディを背負うことになりそうだ。
悪いことは同時に起こることが世の常。サムスンはスマホのリコールも初であったが、米国で販売された洗濯機のリコールも発表し、世間を驚かせている。
米国の消費者安全委員会(CPSC)は今月4日、サムスンの洗濯機280万台のリコールを発表した。CPSCは消費者の保護業務を担当するアメリカ連房政府機関で、製品の安全規格を定めるほか、市中で販売される製品のリコール命令を下す業務を担当しているところである。
CPSCによると、米国で販売されたサムスンの縦型洗濯機において強い振動などの異常動作の報告が733件あったほか、鼻や肩などに負傷を負わせた事故も9件あったという。リコールの対象は、2011年以降に販売された34モデルで、サムスンとCPSCは、対応策をめぐって協議を開始したという。
スマホに次いでのリコール事件で、サムスンのブランド価値にも影響を与えるのは間違いない。一方、このようななかでも、サムスンは今年の米国の家電市場でシェア1位をキープしている。だが悪材料は、これだけではない。
サムスンは最近、韓国検察の家宅捜索を受けている。現在、韓国では朴大統領の40年来の友人女性の国政介入疑惑で、政局は大混乱している。内部告発なども相次ぎ、疑惑の輪はどんどん広がっている。その疑惑のなかの1つは、 陰の実力者と言われる女性(崔順実/チェ・スンシル)が財閥企業から資金を集め、2つの財団を設立し、私物化したという疑惑である。また、チェの娘の不正入学と特典に関する疑惑である。
サムスンは、チェとその娘が共同で保有している会社に280万ユーロを提供した疑いで、捜査を受けている。また、財団の設立にもサムスンは資金提供をしているが、どのような動機で資金協力するようになったのかなどについて、捜査を受けているようだ。サムスンはリコールの問題をはじめ、いろいろな問題に直面している。国内では、今回の「崔順実(チェ・スンシル)ゲート」と呼ばれるような疑惑に、なぜ数百億ウォンを提供するようになったのか、疑いの目が向けられている。もう一方、海外では今回のリコール事件で、「サムスンの技術は大丈夫か」という根本的な疑問を持たれるようになったかもしれない。
韓国の政治が揺らいでいるなかで、韓国を代表する企業であるサムスンの危機は、韓国経済の危機に波及しかねない。サムスンが今回の危機をどのように乗り越えるかを、韓国の国民も注意深く見守っている。
(了)
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