話題と人脈は足で稼ぐ、県外から呼び込む藤堂ママ流集客術(前)
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航空スタンドバー「リンドバーグ」
会員制クラブ「ロイヤルボックス」
藤堂 和子 氏「西日本一の歓楽街」と言われ、多くの飲食店が立ち並ぶ中洲。戦後の高度経済成長期からバブル期にかけての繁栄の面影はなく、地元経済の浮沈に左右され、集客に四苦八苦する店が増えている。そのようななか、時間をかけて福岡県外との人的ネットワークを構築し、全国的に有名なママになったのが藤堂和子氏だ。そのスタイルに地域再興につながるヒントを探る。
臨場感のある話題づくりとは?
――中洲のお仕事はどれくらいになりますか。
藤堂ママ ホステス時代も入れると、今年でちょうど50年目です。ママとしては、あと4年で50周年。40周年は東京の帝国ホテルでパーティを開催させていただきましたから、50周年は福岡でパーティをしようと思っています。
――ちょうどオリンピックイヤーですね。
藤堂ママ そうなんですよ。私が元気なうちにはもうないと思うから、4年後の東京オリンピックには、どげんしてでも開会式と閉会式に行きます。
お店でもね、オリンピックの開催中は毎日話題があるんです。昔の話にもなって、お客さまから、水泳の古橋廣之進がどうのこうの、アベベがおったとかね。でも今の子は「アベベって何ですか?」って、知らんわけですよ。19、20歳の子が知るわけないしね。私たちの東京オリンピックの頃は、17か18だったかな。高校を卒業する前でした。その後、ビートルズが来日して、武道館に行ったもん。オリンピック、大阪の万博、そしてビートルズと目白押し。お金がないのに母ちゃんにもろうて、羽田空港までビートルズを見に行きました。
今思えば、いろんなところに行ったから話題が豊富にありますね。飲み屋にいる子は、休みをね、もっと有効に使わんといかんと思うんです。47都道府県は全部行かないと。――全部行かれたのですか。
藤堂ママ はい。最後の岐阜が10年ぐらい前ですね。だから、どんな人が来てもその方の県の話ができます。お客さまが滋賀の方なら、「滋賀に行って何とかっていう料理屋でご飯食べて、美術館に行って信楽焼きを見てきました」ってね。
――自分の地元の話をされるのは嬉しいですね。
藤堂ママ 嬉しいでしょ。私は、必ず市場と飲み屋に行きます。「どこどこの市場に行って、あの道を行ってね」とか話したら、「へえ、行ったことあるの」って感心されますよ。やはり、提供する話題は自分の足で稼がないといけません。雑誌やネット読んだとかでは臨場感ないでしょ。自分で行ったから、写真はきれいだけど、実際に行ったらがっかりしたとかね(笑)。
――たしかに地元の人や実際に行った人でないとわからない情報ってありますね。
藤堂ママ そう、行かなきゃわからない。たとえば、郡上市(岐阜県)の盆踊りは、富山の八尾のおわら風の盆と同じぐらい、すごい情緒がありました。ねぶた祭りは、青森のお客様に「お金払いますから桟敷席を取ってもらえますか」とお願いして見物させていただきました。そこで地元のお客さまから教えていただいたのですが、弘前が「ねぷた」、五所川原が「たちねぶた」、青森が「ねぶた」と呼び方が違うんです。
――お客さまを通じてご当地に行かれることもあるんですね。
藤堂ママ 行くと、その方が「リンドバーグのママが来たよ」って何人か呼んでてくれるんです。みんなで飲みに行って仲良しになるでしょ。この20年くらいは飲み屋を行脚しとるんです。
(つづく)
【聞き手・文:長丘 萬月】<プロフィール>
藤堂 和子(とうどう・かずこ)
1946年、福岡市生まれ。中洲の会員制クラブ「ロイヤルボックス」、老舗の航空スタンドバー「リンドバーグ」のママ・経営者。71年、「リンドバーグ」を先代の母親から受け継いで3代目ママに。90年代に「ロイヤルボックス」の経営を引き受け、中洲一のクラブとして成長させた。テレビ、ラジオへの出演のほか、コラム執筆、講演会など多方面で活躍中。関連キーワード
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