2024年12月27日( 金 )

労基法違反で書類送検、時代錯誤な経営が危機を招く~大成印刷(株)(前)

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 大成印刷(株)は11月22日、福岡中央労働基準監督署によって労働基準法違反の容疑で書類送検された。従業員の時間外労働時間は1カ月あたり最大で158時間にものぼったという。最近話題になった「電通新人社員自殺」の女性社員の残業時間が月105時間だったということを鑑みても、大成印刷の労働環境がいかに過酷なものだったかは想像に難くない。その背景には大成印刷だけではなく、印刷業界、そして中小企業全体が抱える大きな問題がある。

労働基準法違反、1日22時間の労働

 福岡中央労働基準監督署によると、大成印刷は1月6日から2月29日までの間、労使協定を届け出ずに、30代と50代の男性従業員2名に時間外労働をさせた疑いがある。時間外労働は最大で1日に14時間、月158時間におよんだ。従業員2名が行っていたのは印刷物を制作するオペレーター業務。印刷機械を扱うため、最低でも2人以上の人員が必要となる。大成印刷では3交代制で業務を回していたが、繫忙期になると2交代制になることもあったという。また、機械の故障によって通常業務が延滞した際に、機械の修理などを含めて大幅に労働時間が延びることもあった。

 大成印刷に労働基準監督署による臨検監督が入ったのは今年の7月。臨検監督とは、労働基準監督官が労働基準関係の法令に基づき、職場に直接立ち入ったうえで、労働者の労働条件並びに労働環境や、労働者の健康管理状況を把握するために行われる調査のことである。法令違反が認められた場合、行政指導を行うことが労働基準監督官の権限として、労働基準法101条、労働安全衛生法91条に定められている。
 労基署によると、今回立件されたのは2件のみとなっているが、その他にも時間外労働の話が確認されたという。
 また、大成印刷の30代の従業員はもともと体調を崩しがちだったこともあり、現在では同社を退職している。

 元より、3K<危険・きつい・汚い>といわれる印刷業界。現在ではインターネットの普及により市場規模の縮小が深刻化しているが、その弊害が従業員の労働環境にあらわれているのか。

地場老舗業者の大成印刷

 大成印刷の創業は1970年。今回の1件で、法人と共に書類送検された会長の清家邦敏氏が印刷業を目的として設立した。当初は企画提供を中心とした営業展開だったが、事業の拡大を目指し、74年に福岡市東区三苫に工場を取得。内製化によって狙い通り事業規模は拡大していき、84年には現在地に印刷工場を新築、本社と共に移転した。89年には東京事業本部を設置。主にポスターやカレンダー、チラシといった宣伝用印刷物を手掛け、その他にショッピングバッグや包装紙、コマーシャルフォトなども扱う。関連会社は販促広告作成を手がける(株)ブリンク、スチール写真やムービー関連の制作を担当する(株)スタジオ56、婚礼・ショッピングバッグなどの袋制作を行う福邦製袋工業(株)、出版・編集を手がける千年書房(株)の4社となっている。いずれも代表は清家邦敏氏が務める。

 大成印刷の業績は【図1】の通り。売上高は小さな増減を繰り返しながら、徐々に減少傾向をたどっている。斜陽産業である印刷業界全体の流れに沿った動きである。2000年頃から、インターネットの普及によってコストのかかる紙媒体の需要が減り、市場規模の縮小が始まった。さらに、13年には取引先の津田ホールディングスの破産により2億6,495万円の焦げ付きが発生している。経営環境が安定しているとは言い難い。

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大手2社の寡占構造、市場縮小は進む

 経営が不安定なのは大成印刷だけではない。おそらく印刷業界全体に言えることだ。むしろ、大成印刷は地場の老舗印刷業者としては好調な業績を残している方だとも言える。

 印刷業界では、凸版印刷と大日本印刷の2社が最大手として突出した存在となっている。一方で、中小規模の印刷専業は倒産・廃業が目立つのが実情だ。M&Aによる業容拡大や他業界からの参入もあり、縮小している市場のなかで争っている状態である。
 経済産業省によると、14年の印刷・同関連業の「製造品出荷額等」は5兆4,159万円となり、1991年の9兆円弱をピークに減少の一途をたどっている。それだけ、メディア発信が紙媒体からネットへと移り変わったのだろう。

(つづく)

<COMPANY INFORMATION>
代 表:清家 邦敏
所在地:福岡市博多区東那珂3-6-62
設 立:1970年10月
資本金:6,330万円
業 種:総合印刷
売上高:(16/3)29億4,500万円

 

(後)

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