2024年12月24日( 火 )

一級建築士免許裁判、控訴した仲盛昭二氏に訊く(2)~不誠実行為

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 国による一級建築士免許取消処分の取消を求め、法廷で戦う仲盛昭二氏。氏へのインタビュー第2弾は、取消処分の詳細に関する内容となっている。

国の「不誠実行為」

 ――福岡市がサムシングの構造設計を問題とした背景は何でしょうか。

 仲盛 姉歯事件の後、建築確認制度が大きく改正され、建築確認審査における構造計算書や図面に関する不整合に対するチェックが厳しくなりました。チェックは厳しくて当たり前ですが、裏返せば、改正以前は、審査のチェックが甘く、不整合も多かったということです。実際、福岡市の建築確認においても、審査の指摘事項に対する修正があった場合、建築審査課の担当職員から、「構造計算書の修正した部分だけを差し替えるように」という指示を受け、その通りに差し替えることは、日常的に行われる当たり前の修正作業となっていました。

 また、その場(役所)で、図面や計算書に直接書き込みをすることも多く、図面相互の間でも不整合が発生していました。これは、構造だけに限らず、意匠図や設備図でも同様に、各図面の間で不整合はありました。しかし、それらの行為は、全て、役所の担当者の指示によるものであり、その結果、問題点が修正された適合物件として建築確認済証が交付されていたのです。サムシングが構造設計を行った物件も、役所による建築構造のチェックを適切に受けていました。仮に、不整合があったとしても、他の設計事務所と同レベルの内容であったはずです。

 不整合は、基本的には、生じないようにすべきです。しかし、免許取消処分の対象となった14件の物件の設計当時(平成12年頃)の建築確認制度を運用する行政側の実態が厳格でなかったことは明らかな事実であるし、姉歯事件が無ければ、建築確認制度のずさんな運用は、今でも続いていたかも知れません。

 ――福岡市などの行政は、どう対処したのですか。

 仲盛 国交省から各行政庁に対し、サムシング関連の物件について調査するよう命令が出ていたそうです。調査が実施された588物件すべてについて、一部の不整合はあったものの、構造上の安全性を確認できたという結果となっています。調査対象となった物件の建築主等に対して、行政庁から安全証明が発行されています。

 ――行政により建物の構造上の安全性は確保されているのに、免許取消処分になるということが、よく理解できないのですか。

kensetu7min 仲盛 国は、構造上の安全性が確保されていても、構造計算書に不整合があれば、建築士法の懲戒処分理由のうち「その他の不誠実行為」に当たるという考えらしいです。

 建築士法では「その他の不誠実行為」のランク(減点数)は4点となっており、14物件の残り13件分を1点ずつ加算し合計17点となり、免許取消の減点数である16点を上回るので、免許取消処分ということです。

 「その他の不誠実行為」というのは、懲戒規準に具体的に記載されていない行為であり、仮に、構造計算書の数値が少し違ったとしても、構造耐力を満足していれば、厳罰の対象にならないのではないかと思います。1件に付き1点を加算するのは、その行為が非常に重い場合に限られます。

 今回のケースが「重い」か「軽い」かの判断については、すべての物件が、構造の安全性に問題ないことを確認できているわけですから、1件ずつ加算するほど重い行為には該当しないはずです。しかし、国の主観では、加算の対象になると判断したようです。私としては、到底、納得できません。

 ――国の免許取消処分の詳細を、お聞かせください。

 仲盛 国は、サムシングが設計に関わった物件1万5,000件の内、14物件について、構造計算の入力を再現する「再現計算」というものを行い、「数値が整合しなかったので不誠実行為に該当する」という理由で免許取消処分にしました。

 対象となった14物件の構造計算に使用されていた構造計算プログラムは、「SS1(改)」というプログラムでした。国が再現計算に使用したプログラムは「SS2」というプログラムであり、同じメーカーの製品ですが、解析方法などを一新した新モデルであり、内容は大きく異なっています。さらに、同じプログラムでも、1年間に数回から十数回のバージョンアップという不具合の修正が頻繁に行われています。当然のことながら、バージョンアップ後のプログラムによる計算結果には少しずつ変化があり、数十回のバージョンアップを経れば、大きな差になります。それが、同一プログラムではなく、新しいモデルのプログラムに変われば、その差はさらに大きなものとなります。「再現計算」というからには、設計当時のプログラムを使用し、忠実に再現されるべきであると思います。

 このようにアンフェアな「再現計算方法」の採用により導き出された、いい加減とも言える結果によって、私は、一級建築士免許取消という、建築士にとって死刑に相当する非常に重い処分を受けたことになります。国が行った再現計算が、当時のプログラムによらない「不誠実行為」であることに憤りを感じます。

(つづく)

 
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