鹿島建設・耐震偽装マンション問題、第三次耐震診断の結果は?(5)
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――「鉄筋のかぶり厚さ不足」、「コンクリートの中性化」は、建物にどういう影響を与えるのですか。
仲盛 火災による熱や、経年によるコンクリートの劣化などから鉄筋を保護するため、建築基準法施行令により、鉄筋のかぶり厚さが定められています。この規定が守られていなければ「違法状態」なのです。鉄筋のかぶり厚さが不足していると、鉄筋の腐食が早期に始まりますし、このマンションにおいては、かぶり厚さがゼロの箇所も多数判明しており、実際に、相当な腐食が確認されています。
コンクリートは、アルカリ性である状態が保たれることによって、内部の鉄筋の腐食(酸化)を防止できるのです。しかし、かぶり厚さの不足やひび割れがあると雨水の浸入などにより、コンクリートがアルカリ性から酸性に向かいます。これをコンクリートの中性化といい、中性化が進むと、鉄筋の腐食が早期に進行します。
このマンションの調査では、最大で64mmも中性化が進んでいます。これは、鉄筋の基準かぶり厚さ30mmをはるかに超える深さであり、こういう状態に置かれた鉄筋は、早晩、腐食してボロボロとなり、本来、鉄筋が受け持つべき「引張り」に対する抵抗力が消滅して、危険な状態となってしまいます。――「コンクリート内部の異物混入」というと、台湾で倒壊したマンションが頭に浮かびますが、同じことなのですか。
仲盛 台湾のマンションの倒壊は、鉄筋コンクリートの柱の内部に一斗缶が混入している映像が流され、多くの方が衝撃を受けたと思います。鹿島建設が施工をした本件マンションでも、木片などの混入が確認されています。そして、鹿島建設は、この異物混入も、平成19年の裁判において、下請業者へ損害賠償を求める理由としていました。
鹿島建設は施工の当事者でありながら、上記のような事を平然と記述しています。本件訴訟において鹿島建設は、「図面通りに施工したのであり、構造上の問題は設計だけ」と主張していますが、9年前に、自らの「施工に問題があり、極めてずさん」である事を認めていたのです。
下の写真は、梁のコンクリートが剝落した驚愕の写真です。
これほどのコンクリート片が剝落すれば、その部分をモルタルで補修しても表面上の補修に留まり、構造体としては、断面を大きく欠損した状態であり、設計通りの耐力が毀損しており、非常に危険な状態です。
――このマンションでは、地盤調査(ボーリング調査)が行われておらず、鹿島建設も、施工の際に、支持地盤の深さを確認していないと聞きましたが、事実でしょうか。
仲盛 そもそも、本件マンションの設計図面には、ボーリングデータが添付されておらず、杭先端の深さとして、「GL-42m」と記載されているだけです。恐らく、近隣のボーリングデータを参照にしたものと思われます。このような場合、現場で、杭工事の前に、支持地盤の深さを確認しなければ、杭長を決定することができません。しかし、鹿島建設が、支持地盤の深さを確認した形跡がなく、本件裁判においても、支持地盤の深さを確認した資料は、ついに提出されることはありませんでした。
近隣のボーリングデータと建設地の支持地盤の深さが全く同じという確率は非常に低く、あくまでも参考に留めるべきです。建設地で地盤調査を実行しなければ、支持地盤の深さを決定できないことは、建設業者であれば誰にでも理解できることです。鹿島建設は、この基本的で重要な作業を怠ったため、杭が支持地盤に到達しているかどうかは全く不明であり、杭が支持地盤に届いていない可能性もあるのです。(つづく)
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