世界に挑んだ一年(中)~2016年スポーツ界回顧 鹿島が開いた世界への扉
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今年もっとも世界に近づいたのは、鹿島アントラーズだろう。Jリーグのファーストステージこそ優勝したが、伸び盛りの若きブラジル人ウインガー、カイオをUAEのクラブに引き抜かれてから失速。年間勝ち点3位としてチャンピオンシップに臨んだが、多くのサッカーマスコミは「最強王者・浦和の戴冠」か「無冠の帝王・川崎の初タイトル」に注目していたことは間違いない。
しかし、そこから「ここぞというときには絶対に勝つ」とJリーグ各クラブが恐れる鹿島の脅威の勝負強さが発揮される。勢いに乗っていた川崎を1-0で完封すると、浦和との決勝では第一戦こそ0-1で敗れたものの、二戦目で2得点を挙げ、アウェイゴール差でJリーグを制覇。さらに開催国枠という、いわば「オマケ」で出場したクラブワールドカップでは、オセアニア代表、アフリカ代表を下して南米代表のアトレティコ・ナシオナルとの対戦にこぎつける。しかし、いかに鹿島とはいえ、ナシオナルの相手は荷が重いと誰もが考えていた。
ナシオナルの南米勢らしいパスワークと正確なキックは、見るものに「ああ、さすがクラブ世界一を決める大会だ」と思わせるのに十分なものだった。しかし、ピッチで走っていた鹿島の選手たちは微塵も気圧されていなかった。PKで先制すると、焦るナシオナルの選手たちを的確に潰しながらカウンターを仕掛け、ゴール正面で後ろ向きの体制でクロスを受けたMF遠藤康が冷静にヒールで流し込んで勝負あり。敗戦をまったく想像していなかったナシオナルの選手たちの心を完全にへし折り、さらに1点を追加して3-0と堂々の勝利を挙げた。
ここで決勝に待っていたのが、世界最強の一角にいるレアルマドリードである。かつてガンバ大阪や浦和レッズがこの舞台で世界の強豪に挑んだが、いずれも「勝負」を競う場所には到達できなかった。しかし鹿島は、「いつも通り」ただ勝ちを目指すことで、その高みに登ったのだ。
(つづく)
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