孫正義氏は「日本のバフェット」に~ソフトバンクグループ(前)
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ソフトバンクグループ(株)の孫正義社長は、事業家から投資家に本卦還りした。サウジアラビアの政府系ファンドと組み、10兆円規模の投資ファンドを立ち上げる。孫正義氏は「日本のバフェット(ウォーレン・バフェット氏は世界最大の投資持株会社バークシャー・ハザウェイの筆頭株主であり、同社の会長兼CEO(最高経営責任者)。同社の株主総会では、「オマハの賢人」と呼ばれるバフェット氏の話を聞くため、世界中から数万人が集まる)」になる日が来る。サウジマネーを運用する孫氏は世界のトップと交流を深めている。
プーチンロシア大統領と立ち話
2016年12月16日。日ロ首脳会談に合わせて都内で財界人による「日ロビジネス対話」が開かれた。ソフトバンクグループの孫正義社長が突然現われ、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と肩を抱きあって親しそう話している姿をテレビが映し出した。
〈日本の政府関係者はぶぜんとした様子。孫氏は記者団に「トランプ次期大統領と電話で話す予定があり、プーチン大統領からも『ぜひよろしく伝えてくれ』と頼まれた。今度、我々は米国に投資するが、『ぜひロシアにも』と頼まれた」と話した〉(朝日新聞デジタル12月16日付)
孫氏は16年6月、サンクトペテルブルグでプーチン大統領と会談した。この際はロシアの水力発電所をつくる電気を日本に送る大陸間横断送電網の構想を提唱したという。
今回、人工知能など最先端技術への投資を打診されたようだ。プーチン大統領は、投資家・孫正義氏に期待しているのである。トランプ次期米大統領と面会
プーチン大統領と会った10日前の12月6日、孫正義氏はニューヨークのトランプ・タワーでドナルド・トランプ次期米大統領と会談した。トランプ氏は面会後、孫社長をトランプ・タワー1階のロビーまで見送った。2人のにこやかな姿がテレビのニュース番組で映し出された。時事通信社(12月7日付)はニューヨーク発としてこのように報じた。
〈同社(ソフトバンクグループ)が米国の新興企業などに500億ドル(約5兆7,000億円)を投資する方針を伝えた。5万人の新規雇用が生まれるとしている。
(中略)ロビーで報道陣の取材に応じた孫社長は、トランプ氏には共通の友人を介し、自ら面会を申し込んだと説明した。世界規模のIT投資を目的に(16年)10月に設立を発表した10兆円規模のファンドから、今回の資金を出すという。〉米アップルに助け船を出した
孫社長がトランプ次期米大統領に米国への投資と新規雇用を提案したのは、米アップルなどシリコンバレーの企業とトランプ氏の冷え切った関係を修復する狙いがあったと解説された。
シリコンバレーのIT企業の多くは民主党のオバマ政権と親しかった。そのため、共和党から立候補したトランプ氏は大統領選でIT企業に厳しい態度をとった。ソフトバンクはアップルのiPhone(アイフォーン)の国内販売によって、大きく成長した。そこで助け船を出したというわけだ。
仲介の労が実ったのだろうか。12月14日、トランプ氏はIT企業の代表とニューヨークで会談した。アップルのティム・クック氏やグーグルの親会社アルファベッドのラリー・ペイン氏らが参加したと現地のメディアは伝えた。それと前後して、米ウォールストリート・ジャーナル紙(電子版)は12月12日、〈米アップルが、ソフトバンクグループが設立する予定の「10兆円ファンド」に最大で10億ドル(1,150億円)を出資する方向で協議している〉と報じた。
孫氏はトランプ氏との約束を実行に移す。ソフトバンクグループは12月19日、米衛星通信ベンチャーのワンウェブに10億ドル(約1,170億円)に出資すると発表した。ワンウェブはソフトバンクなどからの出資で米フロリダ州に超小型衛星の工場を建設。3,000人の雇用を創出するとしている。電光石火の早業である。
(つづく)
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