2024年11月24日( 日 )

「大砲」のいない正月スポーツ~年明け早々、誠に申し訳ないがひとつ注文を(後)

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 この大会ではトラック競技の花形・100メートルにカール・ルイス選手がいて、9秒86という世界記録で優勝、そしてもっと驚いたのが200メートルのマイケル・ジョンソン選手の20秒01という数字だった。独特の走法、そして、驚異のタイムであった。400メートル・リレーではアメリカチームが37秒50という数字で世界記録の優勝。メンバーにはもう一人すごい選手がいた。カール・ルイスが大活躍の大会でルイスをしっかりと押さえて走り幅跳びで優勝した、マイク・パウエル選手だ。
 すごい選手だった!カール・ルイスが8メートル91を記録したが、パウエルは8メートル95という記録で優勝した。会場全体がカール・ルイス一色という雰囲気の中で、この素晴らしい精神力は賞賛していいと思う。

 ただ、私が一番陸上競技に惹かれたのはこれらの競技ではなく、10種競技を見たからだと思う。金メダルに輝いたダン・オブライエン選手の競技を見ながら、10種競技の選手と専門競技の選手の違いが鮮やかに見えてきて、何か野球の世界を覗いたような気がした。

sora 1965年捕手として入団させてもらい、3年目に1塁手になり、4年目にデビューさせてもらって、11年目に三塁手にコンバート、なにかそんなころの自分が見えてきたような気がしたのだ。野球の世界でもよく監督に言われるのだが、どこでもできる選手は使う方としては大変便利だ。しかし、専門職としてやってきた選手にはどうしても勝てないのが現実だ。

 そこが見えてきた時に何かものすごく陸上競技のトラック競技が身近に感じ、そこから毎回大変興味を引かれるようになった。その延長に駅伝競技がある。駅伝の場合は1本のたすきをつなぐという、1個のボールをつなぐ野球と近いところが感じられた。
 ただ、ここ数年、終わった後に何か物足りなさを感じるのは、昔に比べると「大砲」という選手が見当たらないからかも知れない。花の2区には大砲が欲しいもの。外国人選手のダイナミックな走りに負けない「和製大砲」だ。

 今年はその意味では神奈川大学の鈴木選手が外国人選手を抑えて1時間7分17秒というタイムで1位、うれしい出来事だった。でもまだまだ区間記録には遠い数字。2009年に山梨学院大学のメクボ・ジョブ・モグス選手が記録した1時間6分4秒という数字があり、日本人選手の記録としては1999年に順大の三代直樹選手の1時間6分46秒という数字がある。もう時間がかなり経っているのだから、体力も、技術も進んでいるはず。そろそろ追い越してくれる選手を見たいものだ。

 今年の総合優勝青山学院からシード権10位の東海大までのタイムが6分しか離れていないということである。みんなが仲良く入ったという感じがしてならない。以前であればこんなタイムでは済まなかったと思う。もっと大きな差が出ていただろう。どこのチームも似たようなチーム構成になってきたということではないだろうか?どの区間で攻めて、どの区間で守って、という、それぞれのチームの特徴が見えて来ない。この大学はこんな攻め方をするのか!と驚くような「大砲」を中心に据えた戦いができるチームを見てみたい。レースを見終わったあとに、来年はこんなチームになっているだろう?こんな戦いをするのではないだろうか?という期待の持てるチーム同士の戦いが見たいものである。

 いずれにしても駅伝は好きである。好レースを期待しているだけにこんな見方をしてしまうのかな?ゴルフには海外で活躍している松山選手、石川遼選手という「大砲」ががんばっているから多くのファンが期待し、楽しみにしている。
 テニスには錦織選手が世界ランク5位という「大砲」として十分ながんばりを見せている。だから多くのファンを惹きつけているのだろう。
 過去には男女共に世界レベルで優勝争いをしてきて、オリンピック優勝経験もあるマラソンに「大砲」がいないというのはなんとしても寂しい。駅伝を足がかりに、世界レベルで勝負できる「大砲」を育てて欲しいと思う。

 野球においては今年春先に行われるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で何としても優勝して、前回3位にも入れなかったという屈辱を拭い去って欲しい。
 最近の日本を取り巻く環境は何か国中が重たいものを感じる。そんな時だからこそスポーツの持つ明るさを世の中のために十分に発揮して、多くの方々を明るく、勇気づけてほしいものだ。

(了)
【衣笠 祥雄】

 
(前)

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