訪日外国人観光客4,000万人を達成するためには
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2016年11月、日本政府観光局(JNTO)が「訪日外国人旅行者数2,000万人突破」と誇らしげなプレスリリースを配信したのは記憶に新しいところだ。日本を訪れる外国人旅行者は、03年はおよそ521万人。この年始まった「ビジット・ジャパン・キャンペーン」と歩調を合わせるように増加の一途をたどっていく。11年の東日本大震災と福島第一原発事故の影響で足踏みしたものの、13年に1,000万人を超えると、15年には1,974万人、16年11月末までの推計で2,198万8,000人となった(JNTOによる。16年の年間通算推計は今後発表される)。
2,000万人でも、相当な人数である。しかし、上には上が……ではないが、政府が「2020年までには」と関係各所にハッパをかけている目標人数は、あっと驚く4,000万人なのだ。「オリンピックでの瞬間最大風速を計算に入れているのでは」と思う向きもあるかもしれないが、2030年までの目標はなんと6,000万人。現在の日本の総人口1億2,000万人の半分におよぶ訪日外国人を呼び込む、というのだから驚きだ。しかし、この遠大な目標に具体性はあるのだろうか。少なくとも、今のままではその道のりは遠い。それどころか、まだ入り口にもたどり着いていないのではあるまいか。
試しに、町に出て最寄りの駅まで歩き、電車に乗り、ターミナル駅で乗り換えてみよう。ただし、日本語を一切使わず、日本語の案内表示も見ずに、だ。不可能とはいわないが、相当の不便を強いられることは間違いない。英語の表示がある場合もあるだろう、気の利いたところなら簡体字中国語やハングルの表記もあるかもしれない。では、東南アジアで最大の人口を擁するインドネシアから来た観光客がわかる言語は?タイはどうだろうか、ベトナムは?経済成長著しいカンボジアやミャンマーは?答えは言うまでもないだろう。
早くから「文明の交差点」として知られるシンガポールの例と比べると一目瞭然。もちろん、もともと中国文化圏であるうえにイギリスの植民地だった歴史もあるが、英語/中国語の二カ国語表記は当然、フランス語やスペイン語、日本語の案内表記もいたるところで見ることができる。さらに、シンガポールでは誰もがカタコトではあるが英語をしゃべることができる。これは中国系・インド系・マレー系・ヨーロッパ系とさまざまな民族が集まる多民族国家ならではのことだ。英語は誰にとっても外国語だから、ブロークンでも誰も気にしないという理屈だ。やや脱線したが、本題に戻ろう。現在、日本を訪れる外国人でもっとも多いのが中国人、次いで韓国人だ。とくに福岡の場合は、地理的な条件からも両国が占める割合は日本全体よりも高いことはいうまでもない。しかし、韓国はすでに総人口の1割に迫る人数が日本を訪れている計算になり(韓国の総人口:5,022万人 訪日旅行客数:およそ500万人 ※人口は2013年、訪日旅行客数は2016年の推計)、これ以上の上積みは期待できない。中国は計算上まだ伸びしろはあるが、爆買いも一段落して今後は不透明だ。これから目指すべきは、今後の経済的成長が見込まれる東南アジア、南アジアからの集客だろう。そのためには、街角や交通機関の案内標識の多言語化を標準化するなど、受け入れの準備を整えることと、日本が彼らにとって発揮できる魅力が何なのかを徹底的に洗い出し、効果的に発信していくことに尽きる。「観光」は、その土地ごとの魅力に惹かれた人々を集めることで成立する。たとえば外国人旅行者に人気の渋谷のスクランブル交差点のように、日本人が気づいていない日本の魅力はまだまだあるはずだ。これを掘り起こすことがさらなるインバウンド増加のカギになるだろう。
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