就任式まで、あと数日。トランプ次期大統領の命運や如何に?(後)
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国際政治経済学者 浜田 和幸 氏
何かと話題に事欠かないトランプ氏だが、このところその存在感が急浮上しているのが娘イバンカの言動だろう。「もし自分の娘でなければ、絶対恋人にしていた」とトランプ氏がのろけるほど最愛の娘がイバンカである。注目を集めるきっかけは安倍総理がトランプ氏をニューヨークのトランプ・タワーに訪ねたときのこと。
外国の指導者との初顔合わせとして世界から注視された安倍・トランプ会談の場にしっかり同席していたからだ。外交官でも政策アドバイザーでもない彼女が「なぜ日本の総理との会談に同席したのか」と、アメリカでは大きな注目とともに批判を浴びることにもなった。
というのは、彼女は自分の名前を冠にした高級ブランドのファッションや宝飾品を内外に手広く販売しており、近く日本の大手アパレルメーカーとも独占販売の契約を結ぶ交渉をしていたからだ。父親の次期大統領が進出先の日本の最高指導者と会う場に同席することで、圧倒的に有利な条件で対日進出をまとめる上げることになったことは言うまでもないだろう。
これでは明らかに公的立場を利用した「利益誘導」ということになりかねない。しかも、その後、イバンカは「私と2人だけでお茶を飲みたい方に45分間の時間を作ります。希望する方は入札をお願いします」と派手なネット宣伝を始めたから、皆がさらに驚くことに。彼女を通じて次期大統領にアクセスしたいとの下心見え見えの御仁から続々と申し込みが来たというから二度びっくりだ。
しかも、最高額となる日本円で250万円で応札した御仁に対して、父親譲りで強気の彼女の反応は「最低500万円じゃなくっちゃダメよ」。彼女に言わせれば、「こうして集めたお金は自分の財団が管理するので、私的に使うわけじゃありません。世の役に立つ目的で使うので、どんどん高い値段で私の時間を買って頂戴」ということらしい。実際、ネット上では500万円近くまで競り上がった。なかなかマネのできないネットオークションであることは確かだ。
この父にして、この娘あり、ということだろうが、余りの金銭至上主義には空恐ろしさを感じざるを得ない。ところが、このイバンカの競争入札の高騰ぶりが内外のメディアで取り上げられたところ、「やり過ぎだ!」と、アメリカ国内では大いにヒンシュクを買うことに。結局、キャンセルせざるを得なくなった。世論の反応を想定できなかったに過ぎない話だ。
すると、今度は、2人の息子が「自分たちと一緒にハンティングに行きませんか」と呼びかけ、こちらは「参加費が1人1億円」と、さらに高額のイベントを目論む始末。トランプの成人した息子たちはハンティングが趣味のようで、はるばるアフリカのケニアなどに出かけては、その腕前のほどを自分のサイトで自慢気に紹介している。娘も息子たちも、新大統領とのアクセスを得たい人間は多いはずだから、とにかく高く吹っ掛けようとする「金銭至上主義」丸出しだ。
「この親にしてこの子あり」であろうか。トランプ新大統領がいくら祝賀行事の予算を削って「国民とともに」と言い張っても、子どもたちの言動を見ていると、そんな言葉が白々しく聞こえるばかり。コンウェイ顧問の言うように、「無視するのが一番」なのだろうか。いずれにしても、前代未聞のビジネス最優先で自らの帝国を築いてきたトランプ氏。大統領としてこれからどんなトランプ旋風を巻き起こすものか。無視せず、注視する必要があることは間違いない。さもなければ、想定外の落とし穴に飲み込まれかねない。その先行きを占う歴史的な就任式が間もなく開会する。
(了)
<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。
今年7月にネット出版した原田翔太氏との共著『未来予見〜「未来が見える人」は何をやっているのか?21世紀版知的未来学入門~』(ユナイテッドリンクスジャパン)がアマゾンでベストセラーに。関連キーワード
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