2024年11月22日( 金 )

【検証】八幡物産『北の国から届いたブルーベリー』届出撤回の顛末(8)

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 仮処分命令申し立ての却下を求める日本アントシアニン研究会に対し、八幡物産は反論した。5月22日付の債権者主張書面(2)で同社は研究会側の主張を次のように解釈している。

1.債務者らの主張

 債務者らは「『目の疲労感の緩和』という機能性表示についてはこれを否定する文献が存在する」旨主張する(答弁書「第3 債務者らの主張」3(1)イ第2段落)。
 これはアントシアニンに「目の疲労感の緩和」という機能があるということについては、これを否定する文献が存在する。つまり、「アントシアニン自体には、目の疲労感の緩和という機能は無い旨の文献が存在するから、本件文献アの作成に用いられた原材料(以下、「文献原材料」という。●●社原材料のこと)またはこれと同等性のある原材料にのみ、「目の疲労感の緩和があるとの文献しか存在しない」旨の主張であると思われる。

2.債権者の反論

(1)しかし、そもそも申立書「第1 被保全権利」2(2)(3頁中段)記載のとおり、文献原材料と債権者原材料とには同等性はあり、その相違をもって、本件商品に「目の疲労感の緩和」という機能がない旨の主張に根拠はない。

(2)また、当該文献がいかようなものであるか現時点において、債権者においては不明である。
 しかし、債務者矢澤一良(以下、「債権者個人」という)は、●●社の原材料や▲▲社原材料に限らず、アントシアニン自体に「目の疲労感の緩和」という機能があることを示す論文を提出しており、これは論文(Ⅰ)「VDT作業負荷による眼精疲労自覚症状」や(Ⅱ)「視機能に及ぼすホワートルベリーエキスの効果」よりも後に提出されたものである。
 (3)このように、債務者らのする「アントシアニン自体には『目の疲労感の緩和』という機能は無い旨の文献が存在するから、文献原材料またはこれと同等性のある原材料にのみ、『目の疲労感の緩和』という機能があるとの文献しか存在しない」旨の主張はそもそも根拠がない。

 八幡物産の主張については、研究会が「アントシアニンには目の疲労感やピント調節機能の低下を緩和する、などの機能は報告されていない」とした主張に対し、八幡物産側が「目の疲労感の緩和」を否定した論文が存在しているものと取り違えたとものと考えられる。
 それを裏付けるように八幡物産は同27日付の主張書面(3)で、2.-(1)を撤回し、2-(2)についても、「しかし、債務者矢澤一良は、●●社原材料や▲▲社原材料に限らず、ビルベリーエキス一般またはアントシアニン自体に『目の疲労感の緩和』という機能がある可能性がある旨、論文において言及しており、これは(Ⅰ)および(Ⅱ)の論文よりも後に提出されたものである」と訂正している。
さらに八幡物産は、「機能性表示食品制度の趣旨」、「同等性の考え方」、「仮処分命令申立の正当性」などについて自らの正当性を述べている。筆者の見方では、このあたりから双方の議論がかみ合わなくなり始めた。八幡物産は、研究会と研究会に所属する原料サプライヤーとの利益相反などに言及するあまり、研究レビューの正否から論点を逸らしてしまった印象を受ける。

 八幡物産側が主張書面で反論の根拠としている、研究会側が提出したとする論文は「ビデオディスプレイ端末光への暴露に起因する眼精疲労自覚症状に対するビルベリー果実抽出物含有食品の保護的効果」のようだが、そもそも同論文と届出情報とは無縁な関係にある。

(つづく)
【田代 宏】

 
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