決裂した土地売買契約、争点は『3cm』(2)
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(株)ワイズプランニング(以下、ワイズ社)が『事前調査不足』のまま土地を仲介したことで、購入者の(株)九州洋行は多大な損害を被っている。問題の土地は、建築基準法第43条1項で定められた接道義務(道路に2メートル以上接しなければならない)を果たしていなかったのだ。土地売買に際して売主・仲介業者・買主に「実測義務」はない。しかし、今回のケースではワイズ社は買主である九州洋行に対して再建築可能(=収益物件化可能)であるという旨を事前に説明したうえで仲介している。この点が問題になっているのだ。
信頼関係があればこそ
九州洋行とワイズ社は仕事を通じて旧知の間柄だった。九州洋行としては、ワイズ社から土地取引の話を持ちかけられたことに何の疑いも抱いていなかったという。そんなワイズ社に対して九州洋行が不安を感じ始めたのは、取引前の重要事項説明に宅地建物取引士の資格を持たない人間(ワイズ社社員)がやって来た時である。
宅地建物の取引においては、宅地建物取引業法第35条で、重要事項説明は売買契約や賃貸借契約が成立するまでの間に行なわなければならないと定められている。また、宅地建物取引業者は宅地建物取引士をして説明に当たらせなければならないとも定められている。
九州洋行は当然同社員を帰し、有資格者を連れてくるよう指示。これを受け、ワイズ社は後日あらためて資格を持つ社員に重要事項説明を行わせている。ワイズ社のコンプライアンス遵守に対する姿勢に疑問符がつく一件である。
それでも不動産売買に決して明るいとはいえない九州洋行は、これまでの付き合いからくる安心感も手伝い、不動産業の『プロ』であるワイズ社を信頼した。手付金を支払い、その翌月には残金の支払いを完了。司法書士に依頼し所有権移転登記も済ませた。土地売買契約はここに無事成立した。
発覚した再建築不可
「3cm足りない」。もたらされたのは九州洋行にとっては予想外の凶報だった。
九州洋行がワイズ社から購入した土地に、ある賃貸不動産管理業者(以下、X社)が共同住宅用地として興味をしめした。九州洋行は「条件が合えば」と前向きに検討。早速X社は土地家屋調査士に依頼し測量を実施。そこで判明したのが接道2mに「3cm足りない」という事実だったのである。
九州洋行はワイズ社から、土地に建っている建物(2階建、延面積185.48m2)は解体して再建築すれば収益物件として活用できる、と説明を受けていた。だからこそ共同住宅建築に向けて、解体工事まで済ませていた。しかし、建設基準法が求める接道義務2mを満たしていないとなれば話は根底から覆ってしまう。言うまでもなく再建築はできないのだ。九州洋行に残されたのは、資産価値が著しく目減りした土地だけとなったのである。
ワイズ社が九州洋行と取り交わした重要事項説明書には「本物件は、前面道路に対して間口約5mありますが、持分としては間口半分の約2.5mとなると思われます。」とある。気になるのは"思われます"という表現。なんとワイズ社は実測せずに、「歩行や自動車の進入等については、なんら支障がない状態だった」として、"目分量"で判断していたのである。問題の土地は、1977年11月18日に建築確認申請が下りている。このことがまた、ワイズ社に目測で確認を済ませるという行為を是とさせたのである。
さらに、ワイズ社は土地所有者となった九州洋行に知らせず、接道2mを満たすために勝手に隣接する土地に境界プレート(土地と土地の境界の位置を表すための標識)を3cm移動させ、そこが正しい境界であると主張を始めている。ワイズ社のこの行為は、2社の争いに関係のなかった隣接する土地所有者までも巻き込んでしまったのである。
賃貸不動産管理業者であるX社でさえ、土地売買に際して土地家屋調査士に依頼し土地の寸法チェックを徹底している。不動産業のプロであるワイズ社がそれを怠ったというのが信じられない。宅地建物取引士の資格を持たない社員に重要事項説明をさせようとしていたこと。ろくに現地調査もせずに土地売買取引の話を九州洋行に持ちかけたこと。25年以上の業歴を誇っているにも関わらず、プロとは思えない軽率な行為を重ねてしまったワイズ社。
次回、ワイズ社の言い分を紹介する。
(つづく)
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