2024年11月29日( 金 )

地球環境の変化と環境技術の開発競争

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浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス

 NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」から、一部を抜粋して紹介する。今回は、2月3日付の記事を紹介する。


 現在、日本は新たに43カ所の石炭火力発電所を計画ないし建設中だ。我が国は最新鋭の石炭火力発電の技術を有するとしているのだが、新たに発足する「緑の気候基金」による融資を活かして、日本製の石炭火力発電所を途上国に建設する計画を進めている、との一方通行的な国際的な批判を受けている。

 というのも、日本はすでにインドネシアの石炭火力発電に10億ドル、インドやバングラディッシュの石炭火力発電にも6億3,000万ドルの融資を行っているからだ。2009年のコペンハーゲン・サミット以降、国連に報告された300ほどの環境対策融資案件で、石炭火力発電を対象にしたのは日本だけである。我が国の外務省は「高効率の日本製石炭火力発電は、地球温暖化対策上も効果が高い」とし、「日本が技術移転をしなければ、効率の悪い石炭火力発電により、一層温暖化ガスが排出される危険がある」と主張。その点は間違いなさそうだ。

 とはいえ、こうした日本の主張に対し、国連の気候変動対策の責任者であるフィグエレス代表をはじめ、欧米諸国から批判の声が高まっているのはなぜか。実のところ、地球環境の先行きを考えれば、いくら効率が高いとはいえ、「化石燃料に依存する現状から再生可能エネルギーへの移転を促す融資に重点を置くべきだ」というのが世界の主流派の意見となっているからである。

 ドイツも同じように石炭火力発電所への融資は継続しているが、日本とは違い、気候変動対策融資とは位置づけていない。日本だけが、気候変動に有効な対策として石炭火力発電所の普及に「緑の気候基金」をはじめ、新たな「気候ファイナンス」を活用しようとしている点は、今後一層世界から厳しい目を向けられることになりかねない。

 それ故に、新たな「緑の気候基金(GCF)」の役割を検討するに当たっては、支援資金の金額の決定や、融資の方法、また実際に資金が有効に活用されているかどうかをしっかりと監視する体制の構築を考慮せねばならない。中国は資金提供を受ける「途上国扱い」となっている点も再検討が必要であろう。ことさら石炭火力に依存する度合いの高い中国にとって、日本の誇る石炭火力発電技術が地球温暖化対策上、効果が高いというのであれば、日中関係の改善の観点からも協力の可能性を検討すべきだ。

 そのためにも、GCFが技術面で連携する「気候技術センターネットワーク(CTCN)」において、日本の技術力がより正当に評価され、GCFの融資先の選定においても、国際的な批判が日本に向けられないように働きかけを強化せねばならないのである。日本には究極のクリーンエネルギーと目される水素燃料の技術もある。今こそ技術と資金の組み合わせで、日本独自の「攻めの球温暖化外交戦略」を推進する時だ。

※続きは2月3日のメルマガ版「世界最新トレンドとビジネスチャンス」第52回「地球環境の変化と環境技術の開発競争:風力発電先進国オランダに学ぶ(後編)」で。

「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」


著者:浜田和幸
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