2024年11月29日( 金 )

日本施政下の尖閣諸島が安保適用範囲は当たり前

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は、当たり前のことを、さも成果があったかのように報道することについての苦言を呈した、2月4日付の記事を紹介する。


成果がないのに、成果があったように報道するのはやめるべきだ。大本営発表である。

米国のマティス国防長官が来日し、安倍首相と会談して、「沖縄県の尖閣諸島が日米安全保障条約第5条の適用対象だ」と明言したと、各紙が大きく報道している。

日米安保条約第5条の条文は次のもの。

第五条:各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する。

条文は、日米安保条約の適用範囲を「日本国の施政の下にある領域」と定めており、尖閣諸島が日本の施政下にあるなら、「自動的に」安保条約適用範囲になる。尖閣諸島は日本施政下にあり、日米安保条約が存在する以上、マティス国防長官が発言してもしなくても、トランプ大統領が発言してもしなくても、安保条約適用範囲になる。ニュースになるような内容でない。「NEWS」が「新しい内容」であるとするなら、このようなことは、「OLDS」に過ぎない。

2014年4月にオバマ大統領が来日した際、オバマ大統領が、「尖閣が日米安全保障条約の適用範囲であること」を明示したことを大きく報道したが、これもまったく意味のないことだ。

日米安保条約第5条が存在し、尖閣諸島が日本の施政下に置かれている以上、「自動的に」尖閣諸島は日米安保条約第5条の適用範囲になる。
日米会談で、成果が何もないから、成果でも何でもない、こんなことを大きく報道するしかないのだ。米国は尖閣諸島が日本の施政下にあるから、安保条約第5条の適用範囲であることを、過去から繰り返し表明しているが、尖閣諸島が日本に帰属するとは一度も言ったことがない。「尖閣諸島の領有権について、米国はいずれの国の側にも立たない」との立場を貫いている。

マティス国防長官が「尖閣諸島の領有権は日本にある」と明言したなら、これはビッグニュースだ。しかし、そんなことは一言も言っていない。
また、「尖閣諸島は日米安保条約第5条の適用範囲ではない」と明言したなら、これもビッグニュースだ。
しかし、日本の施政下にある尖閣諸島が日米安保条約第5条の適用範囲であることは、条文の規定の解釈そのものであり、これを「大きなニュース」であるかのように報じることがいかがわしい。

さらに言えば、米国は尖閣諸島が日米安保条約第5条の適用範囲であることを認めているが、具体的に何をするのかについて発言していない。安保条約第5条は、「自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動する」ことしか定めていない。武力出動するなどの具体的内容を記載していないのである。

1948年に米国上院で決議された「バンデンバーグ決議」は「相互主義の原則」を定めている。米国の自国の安全に影響を及ぼす地域的・集団的防衛協定への参加、およびその協定が〈継続的・効果的な自助と相互援助〉の原則に基づくことを定めている。トランプ大統領は、「現在の日米安全保障条約は、アメリカに日本の防衛義務があるのに、日本には同じ義務がない」と述べており、バンデンバーグ決議との関係で、米国が日本のために防衛出動するのかどうかは不明なのだ。

メディア報道は、ニュース価値のないことを政府の大政翼賛会として大報道するのをやめて、本当に大事なことを伝えるべきだ。

※続きは2月4日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第1659号「超高額ゴルフプレー券を購入する愚」で。


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・植草一秀の『知られざる真実』

 

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