2024年11月25日( 月 )

予算案スピード通過~財政は野となれ山となれ!(5)

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参議院議員 藤巻健史氏

現在に至っては、異次元緩和を止められない

 ――少し話題を変えます。アメリカにトランプ新大統領が誕生しました。そのトランプ大統領が日本の「異次元の質的量的金融緩和」(異次元緩和)について批判しています。先生はこの点をどうご覧になっていますか。

 藤巻 黒田総裁が始めた異次元緩和の実体は、デフレ対策ではなく財政法第5条で禁止されている「日銀の国債引き受け」すなわち「「財政ファイナンス(政府の資金繰りを中央銀行が紙幣を刷ることによって賄う)」そのものです。

 すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。但し、特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない。(財政法第5条)

 デフレ脱却のためであろうと、社会保障費調達のためであろうと、政府の赤字を中央銀行が紙幣増刷で補助すれば、それは財政ファイナンスになります

飛び降りて死ぬか焼死するかの違いに過ぎない

 従って、トランプ大統領が何を言おうと日本は現在に至っては、異次元緩和を止めることはできません。先に「ルビコン川を渡ってしまった」と申し上げたのはこのことです。
 もし、トランプ氏が本気で強硬姿勢で臨んで来るならば、その時点で日本の異次元緩和とは、実は「財政ファイナンス」であったことを世界中に宣言することになります。

 日本とギリシャの違いは、ギリシャの中央銀行は通貨ユーロを刷る権利がないのに対し、日銀は無制限にお金を刷れるだけの違いだけだからです。日銀が異次元緩和を止める、すなわち国債の約8割を買っている日銀が政府を助けるのを止めれば、日本は即ギリシャ化します。さらに深刻なのは、このまま財政ファイナンスを続けていても、例外なくハイパーインフレになることを歴史が証明しており、今の日銀には出口がないことです。
財政破綻とハイパーインフレは同義語です。高層ビルの高層階で火事にあった時に、「飛び降りて死ぬ」か「焼死する」かの違いに過ぎません。

国債買い入れは、2017‐8年で限界を迎える

 ――時間になりました。読者・国民にメッセージを頂けますか。

 藤巻 本日はいろいろと厳しいことを申し上げてきました。それは私が日本を愛しており、子々孫々まで幸せな生活を送って欲しいと、心から願っているからです。そのためには何よりも事実の正しい把握が大切です。

参議院議員 藤巻 健史 氏

 今、円は「避難通貨」という認識が広まっています。しかし、20数年間も経済が停滞して、さらに危険な施策を打っている国の通貨が避難通貨なわけがありません。外国人はほとんど日本の国債を買っていません。そのため、その実態が分かっていないだけです。バブル開始時の30年前と比べて日本の名目GDPは1.5倍になりました。しかし、米国は4.1倍、英国は4.9倍、韓国は17.8倍、シンガポールは9.8倍、豪州は7.5倍、中国は75倍になっています。

 2015年8月にIMF(国際通貨基金)は「日銀の国債買い入れは2017~18年で限界を迎える」とのレポートを公表しました。何よりも内閣府が公表している中長期計画の数字を見ますと、はっきりと「絶対的に厳しい」と数字自身が語っています。内閣府は国民がパニックに陥りますので、そのようなコメントは出すことはできません。

 日銀は国債を買い増しています。しかし、異次元緩和からの出口時に国債の暴落(=長期金利暴落)を危惧して、民間銀行はこの時とばかりに国債保有額をこの4年間で半減させました。また、2016年7月14日の日経新聞には「三菱東京UFJ銀行が『国際入札の特別資格』を返上、国債の保有額が最低限になった」という衝撃的な記事も出ました。

「今は大丈夫」という発想はとても危険です

 日本が財政破綻、ハイパーインフレに向かっており、その可能性がとても高いことはお分かり頂けたと思います。その上で申し上げます。私が本日申し上げたことがもし、起こる可能性が1%未満であれば保険を掛ける必要はないでしょう。しかし、火災保険と同じで、少なくとも、平均10%とか20%その可能性があるならば、保険をかけても、たとえ火事が起こらなくても、文句を言う人はいないと思います。火事がなければ、損は為替損だけで、貯金も、年金も、仕事も現状を維持できます。しかし、ことが起こった場合には、政府は何もできません。自分は自分で守る必要があります。「今は大丈夫」という発想はとても危険です。

最強の保険会社(ドル)を選ぶのが1番です

 ――読者・国民が火事に備えてできる具体的な対策はどのようなものがありますか。

 藤巻 火事に相当するのは、日本の財政破綻、ハイパーインフレです。私はその事態の保険になるのはドル資産だと思います。保険をかけるのであれば、最強の保険会社(国)を選ぶのが1番です。米国は軍事的にも政治的にも経済的にも最強国家です。その国の通貨を持つのが王道と考えています。現在日本の国債の利回りはほぼ0%ですが、米国債は2.5%です。米国債を買えば、日本国債を買うより1年間で2.5%、10年間で25%の利益が得られます。

 ――本日は国会会期中のご多忙の中、お時間を賜りありがとうございました。

(了)

【金木 亮憲】

<プロフィール>

藤巻 健史 氏藤巻 健史(ふじまき・たけし) 参議院議員(日本維新の会)・経済評論家
 1950年東京生まれ。一橋大学商学部卒業後、三井信託銀行に入行。80年に行費留学してMBAを取得(米ノースウェスタン大学大学院・ケロッグスクール)。85年モルガン銀行入行、東京支店長を経て2000年に退行後、フジマキ・ジャパンを設立。世界的投資家ジョージ・ソロス氏のアドバイザーなどを務める。2013年の参議院選挙で当選、現在に至る。1999年から2011まで一橋大学経済学部で、02年から08年まで早稲田大学大学院商学研究科で非常勤講師として毎年秋学期に週1回半年間の講座を受け持つ。日本金融学会所属。東洋学園大学理事。

 
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