脊振の自然に魅せられて 『ミツバツツジ2』
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5月14日(月)からソニーストア天神で開催する写真展の準備中で多忙であったが、今年のミツバツツジ(※1)のことが気になり、時間をつくって山へ。椎原から矢筈峠ルートの車谷へ向かった。
早春に咲くホソバナコバイモは、三角の実をつけていた。ユリ科であることは、一目見てわかる。カタクリの実とよく似ている。ツクバネソウの咲く登山道から沢をわたり、渓谷沿いに続く車谷に入る。マンサクの花はすでに終り、ニリンソウの白い花たちが少し残っていた。
この沢では、ミソサザエの鳴き声を聞くことができる。岩と岩戸の間に巣をつくり、かん高く澄んだ大きな鳴き声が谷間に響きわたる。ミソサザエはスズメくらいの大きさで、体全体が茶色の地味な鳥である。屋久島の白谷雲水峡を小振りにした車谷雲水峡(私が勝手に名づけました)を右手にして高度を上げると、渓谷の水も勢い良く流れるようになる。
やがて淡いピンクの花、ミツバツツジの花が目に飛びこんできた。『やー咲いていたの』と声をかけた。沢沿いに1本だけど、気品のあるミツバツツジが、汗ばんだ私の身体にビタミン剤をくれた。
さらに高度を上げ海抜700mあたり。マンサクが咲く場所で上空を見上げると、新緑が映える木々の間にピンクの花、ミツバツツジが目に飛び込んでくる。楚々としてきれいだ。群落するミツバツツジもさることながら、ひっそりと咲く気品のある花もすてきだ。カメラを取り出しアングルを決め、数枚シャターを切る。
足下の登山道に、山桜の花びらが散っていた。どこに山桜があるのだろうかと四方に目をやり、山桜の幹を捜した。10m先に地味な山桜の幹を見つけた。20年近く歩き続けたのに、今まで気づかなかったのだ。樹齢30年はあろうか、1本だけ孤立する山桜であった。標高が高いので遅咲きなのだろう。来年はぜひ、花びらをたくさんつけたころに会いに来たい。
矢筈峠へ上がり、道標(※2)の支柱を小石で固定し直して、見晴らしの良いアパッチ砦(私の通称)まで脚を伸ばす。そして同じルートを下山。
下から登って来る単独登山の女性1人がこちらを見て、「あらー、池田先生、Sです」と帽子を脱いで挨拶をしてくる。区役所の課長の奥さんであった。容姿を見ると経験豊富な人だとわかる。夫を送り出してから、山に来たとのこと。「今年の山開きにも参加してくれましたねー!」と、静かな山での出会いであった。
花の情報を伝え、ミツバツツジ咲く登山道を下山。登山口の沢の水で汗を拭い、車で帰宅の途へ。2017年5月記
脊振の自然を愛する会 代表 池田友行※1:ミツバツツジは学名「コバミツバツツジ」です。3枚の小さな葉を持つところから名前が付けられています。
※2:矢筈峠の道標は2008年に早良区役所と共働で設置しました。
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