2024年12月23日( 月 )

納税者の視点を欠いた議論続く築地・豊洲問題

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 記事「小池都知事は堂々と築地再整備方針明示すべき」に関して、読者の方からいただいたご意見メールを紹介させていただきます。


植草先生のご意見に100%賛成です

世上、豊洲移転の決定を急げとの主張が席捲するなか、あせりにも似た気持ちで、築地再整備が良いという考えの言論人はいないのかと、ネット上を探していましたが、やっと植草先生のブログにあえて、ほっとしているところです。経験したことはありませんが、砂漠の旅人がオアシスを見つけたといったところでしょうか。

一般市民の多くが「6,000億円もつぎ込んだのだから、使わないのはもったいない」というごく常識的な感覚から豊洲移転を支持しているのは残念ではありますが、やむをえない面もあります。(ただ、女性より男性市民の方がその考えが強いとのアンケート結果には驚きますが)

しかし、経済が専門のエコノミストの多くが、一般市民とまったく同じ理由で、豊洲移転を主張していることには、はっきり言って「信じられない」の一言です。有本香氏や桜井よしこさんのような、経済にはど素人の評論家が豊洲移転を主張するのは、うなずけます。(もちろん、発信力のある彼女らのような言論人が誤った考えを流布するのは大きな問題ですが)

しかし、いまやラジオやネットでの経済言論界の主流となった感のあるいわゆるリフレ派の多くが、有本香氏レベルの主張を行っていることは驚きです。数年前、消費増税反対を主張していたこれらリフレ派のエコノミストの人たちを高く評価していましたが、いまは、マクロ経済には強くても、ミクロや財務経営の観点は弱かったのだな、と失望の念をぬぐえません。
特に、自ら経営を行う実業家でもある上念司、中小企業診断士でもある三橋貴明の両氏さえもが、豊洲移転を主張していることは驚きです。

今回、豊洲か築地かの問題がクローズアップされたとき、まっ先に、学生時代の経済学の授業を思い出しました。新進の助教授が「サンクコスト」の概念を教えた場面です。経済学を学ぶ過程では「なるほどなあ」と感嘆することが多々あります。乗数効果とか3面等価、GDP概念、I=S、IS-LM曲線、サムエルソンの45度線などなど。そのなかでも記憶が鮮明なのが「サンクコスト」です。いまは「埋没費用」となっているようですが、翻訳に苦労したのか、若手の先生は「沈潜費用」と訳していました。

要するに「赤字の事業が黒字に転じる見込みがまったくない場合は、その事業はストップする。それまでその事業にどれだけ投資したかは判断の材料にしない」という教えです。「どれだけ巨額のお金をすでにつぎ込んでいても」です。

赤字事業を継続すれば赤字が膨らむばかりで、行き着く先は倒産です。だから、どの民間企業でも赤字事業からはさっさと手を引くわけです。(さっさと手を引かずに、困難に陥った大企業の例もありますが)よく考えれば、当たり前のことですが、これが民間企業でなく、公的色彩を帯びた事業になると、とたんに常識が通じなくなります。かつての国鉄がその典型的な例です。
加えて、いったん決まったことは、慣性力が強く、なかなか覆らないという日本的な事情もあります。時代遅れと気づいても、造り続けた戦艦大和がその例です。

植草先生が主張されるように、またPTチームの小島敏郎座長が主張されるように、築地市場をコスト高にならないよう通常のスペックで建て替えて、減価償却も含めた経常収支ベースで、黒字か、悪くてもトントンの事業自体でまかない、都民の税金の追加投入は防ぐという意見が極真っ当な解決案です。
しかも、すでに投資した額を一銭も取り戻せないわけではなく、ビルやレストランなどの賃貸収入で補うことも可能です。完全なサンクではありません。
いまの議論は、焦点が店子の事業者に当てられすぎて、納税者の観点が欠けています

最後に、植草先生が指摘した「豊洲に移転した場合の築地の跡地の利権」の話は、「やはりそうか」と得心した次第です。マスコミにはまったく出ないものの、薄々疑念は持っていましたが。
魚を食するかぎり、市場は永遠に存続します。植草先生のような方が正論を主張し、事情に疎い都民に広く知らせることは、現在の東京都民だけでなく、将来も血税を都に納める将来世代の都民にとっても貴重なことです。


 貴重なご意見、ありがとうございました。

 

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