2024年11月23日( 土 )

全国の鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄筋コンクリート造建築物に潜む、構造計算の偽装(5)

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 ――仲盛さんがSRC造やRC造の不正な構造計算の事実を告発したことにより、仲盛さんや元請の設計事務所、デベロッパーなどに建て替えを求める訴訟が提訴されることも想定され、そうなれば、仲盛さんも被告となる厳しい状況に置かれるのではないですか?

 仲盛 これらの不正な構造計算の責任は、設計者やデベロッパーはもちろん、提携ローンを組んだ金融機関にもあります。実際には価値を有しないマンションなどに、高額なローンを組んだのですから同罪です。これを「抗弁権の接続」というそうです。
 熊本地震の被害状況も調査していますが、多くのマンションで、構造スリットの見施工など、図面と施工の不一致が見受けられ、建物にとって致命的な被害が生じています。このような施工業者の手抜きも人命や資産価値に直結する重大な問題ですので、今後、施工業者の手抜きも追求していくべきでしょう。
 私自身は、先ほど述べたように、建築界から身を引く覚悟を決めています。建築界から身を引くにあたり、最大の恩返しは何かということを深く考えた結果、今回の告発に至りました。
 柱・梁接合部や柱脚に関する不適切な構造計算が発覚した建物の所有者が、たとえ、私やデベロッパー、元請の設計事務所を訴えたとしても、私は、是は是、非は非として、その事実を甘んじて受け入れたいと思います。むしろ、居住者の安全確保のためにも、積極的に提訴の行動を起こすべきであると思います。そして、建て替えなり、補強なりの対策を講じて、安全性を確保すべきです。分譲マンションでは、区分所有者の足並みをそろえたり、管理組合での議決など、提訴に至るまで難航すると思われますので、1軒でも2軒でも提訴に踏み切れば、時間も訴訟費用も少なくて済むのではないでしょうか?
 デベロッパーや元請の設計事務所とともに、当然、私も訴えられると思います。そうなった場合でも、私は、建物の所有者や入居者のために、真実だけを淡々と述べたいと思っています。

 ――SRC造の柱脚やRC造の仕口部分の不正な設計に関して訴訟が起きれば、全国的に広がると思いますが、どの構造技術者も同じことをやっていたのであれば、1人ひとりの責任が軽く扱われるような気もしますが。

 仲盛 1人がやっても、全員がやっても、不正な設計は不正な設計であり、建築士として不適切な行為に他なりません。不正な設計に直接・間接を問わず加担した、元請の設計事務所、デベロッパー、金融機関、建築確認機関、各行政庁、国、すべてが不適切な行為を行った、あるいは、不適切な行為の片棒を担いだのです。「多数の者がやっているから正当化される」という問題ではなく、検討すべきことが正しく検討されておらず、建物の安全が確認できないのです。何よりも優先されるべきは人命です。そのために、少し大げさですが、建築構造設計に長く携わった私の残りの人生を捧げても構わないと思っています。

(了)
【文・構成:山下 康太】

 
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