日本の自動運転車市場の規模と今後の成長は?

 NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。
 今回は、7月24日付の記事を紹介する。

 日本の自動運転車市場は、深刻なドライバー不足(物流・タクシー)を背景に、民間・商用サービスの両面から急速に拡大しています。2026年現在の国内の自動運転車市場は約6,000億円です。

 日本政府は30年度までに「自動運転サービス車両(ロボタクシーや自動運転バス)1万台」の導入という具体的な数値を閣議決定しています。さらに、35年末には市場規模が約2.5兆円を突破し、年平均16.8%の超高速成長を遂げると試算されているほどです。 

 一方、海外勢の製品が日本市場で成功する可能性は極めて高いと予測されていますが、その分野は「個人向け」と「商用サービス」で分かれています。具体的には、テスラ(個人向けEV×自動運転)が先陣を切っている状態です。

 実は、日本国内のEV市場において、テスラをはじめとする外国車は新車登録台数の約半分を占めるほどの強さを誇っています。実際、テスラ・ジャパンはAI自動運転機能の26年内の日本での実装を目指して公道テストを重ねているようです。

 オランダなどの欧州当局ではすでに認可が下りた実績もあり、日本での解禁(最短で27年頃の見込み)が実現すれば、一般の個人が乗るプレミアム自動運転車として市場を一気に独占する可能性を秘めています。 

 一方、ウェイモ(ロボタクシー)の可能性も無視できません。すでにアメリカで何百万回もの商用無人タクシー運転の実績を持つウェイモですが、技術的な面では日本車を圧倒しています。

自動運転車 イメージ    日本でも最大手の「日本交通」や配車アプリ「GO」と組み、都内での実証実験(データ収集)を開始しています。ただし、ウェイモは高精度3D地図に頼るシステムのため、日本の絶え間ない道路工事や複雑な狭い路地に対応するためのローカライズ費用が今後の普及の壁となります。なお、日本政府が外国車を規制するのかということですが、結論から言うと、日本政府が「自国車を守るために外国車を意図的に排除・差別する規制」をかけることはないはずです。

 26年6月、日本が国連の専門家会議で共同議長として議論をリードし、一般道を含む「レベル4自動運転システム」の世界初の国際基準が合意・採択されました。国土交通省は、この国際基準に完全に沿って国内の保安基準を改正していく方針です。

 この国際基準を満たした車両であれば、日本車だろうがテスラだろうが、基本的には等しく日本の公道を走る権利が得られるため、政治的な理由での不当な締め出しは不可能となります。とはいえ、規制の焦点は「国籍」ではなく「AIのブラックボックス問題」です。

 テスラなどの導入が遅れているように見えるのは、日本車への忖度ではなく、「E2E(エンド・ツー・エンド)型AIの安全性をどう証明するか」という技術的・法律上のハードルがあることが影響しています。カメラの映像からAIが直感でハンドルを切る最新の自動運転は、「なぜその瞬間にブレーキを踏んだ(あるいは踏まなかった)のか」のプロセスがブラックボックス化しがちです。政府は「有能で注意深い人間のドライバーと同等以上の安全性」を厳格に求めており、これの証明を求めているに過ぎません。これは日産やトヨタなど日本企業も全く同じ条件で苦戦・対応している課題です。 

 また、外資を入れなければ「日本のインフラが崩壊する」という危機感もあります。現在、日本のタクシーやバスの運転手不足は限界を迎えており、特に地方の交通維持は待ったなしの状態です。

 政府は30年代に自動運転車両の販売シェア世界25%を目指す壮大なロードマップを掲げていますが、実証実験の段階から抜け出せない国産メーカー(ホンダの計画延期など)だけでは、国内1万台の自動運転インフラを整備できそうにありません。政府としては、安全基準さえ満たせば、海外の優れた自動運転技術のテスラやウェイモを呼び込んで日本の交通崩壊を救ってほしいというのが本音でしょう。そのため、日本政府は「安全基準は世界一厳しく設定するが、それをクリアできれば国籍に関係なく歓迎する」というオープンかつ厳格なスタンスを取っています。

 市場規模は確実に2.5兆円超へと跳ね上がるため、海外勢の製品は、規制による差別ではなく「日本の超複雑な道路環境にどれだけ早くAIを適応させられるか」という純粋な技術競争によって、今後の市場シェアの大きさが決まる見込みです。日本市場で成功すれば、欧米のみならず、アジア市場でも飛躍的な成長が期待できるでしょう。


著者:浜田和幸
【Blog】http://ameblo.jp/hamada-kazuyuki
【Homepage】http://www.hamadakazuyuki.com
【Facebook】https://www.facebook.com/Dr.hamadakazuyuki
【Twitter】https://twitter.com/hamada_kazuyuki

関連記事