人口減少社会を迎え、問われる宗教のかたち~社会のセーフティーネットへ転換を(後)
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これからの宗教
人口減少は信者の減少を意味し、極論すれば宗教の存続に関わる問題でもある。とくに檀家制度を基盤に地域社会に根を張ってきた仏教関係者の危機感は強い。
15年に出版されて話題となった『寺院崩壊―失われる「地方」と「宗教」』(日経BP)では、僧侶資格を持つ記者が地方の困窮寺院の現状を丹念に追っている。
同書によると、全国には約7万7,000の寺院があり、そのうち住職のいない寺院は約2万寺にも上る。宗教活動を停止した「不活動寺院」も2,000寺あり、誰もいなくなった寺院建物がまさに崩壊の危機に瀕しているという。神道にしても、日本家屋の特徴だった神棚を置く家が減っており、全国平均で約40%、東京では約12%の家庭にしか神棚がない状態だ。では、現代日本人にとって宗教は不要のものなのか。あるいはすでに役割を終えた過去の遺物なのか―。自死数の異常な多さ、あるいは居場所をなくした若者の問題(ひきこもり、ニート)など、宗教が関与すべき現代の問題は数多い。宗教とはもともと、人として生まれたゆえの苦悩を大いなるものに預け、導きを得る営みだったはずだ。しかし、現代日本における宗教法人運営のあり方を見れば、率直に言って煩悩だらけ、欲まみれの集金(集票)機関になり下がったような印象さえ受ける。
本稿執筆にあたって取材を進めるなかで、「戒名に法外な値段をつけ、葬式仏教と揶揄されるようなイベントだけの付き合いであれば、仏教は生き残れない」という声を聞いた。さらに、「神道系団体の政治活動は目に余る」など、宗教団体を「隠れ蓑」にした活動に疑義を唱える意見も耳にした。もはや現代の宗教は、信仰の自由を盾にした、何でもありの混沌としたブラックボックスである。
日本人にとって宗教とは何か。あえて答えを探すとすれば、社会構造が激変する国だからこそ生じる社会の混乱と不条理に正面から向き合い、人がつながり合い、助け合う社会を構築するためのひとつの方法論ではないか。
たとえば貧民救済は宗教の伝統的な活動である。今後、宗教が経済的、社会的弱者のためのセーフティーネットのような存在にならなければ生き残ることは難しい。組織の維持のみにとらわれ、弱者を無視し、軽んじる宗教は、存在する意味すらないともいえる。(了)
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