約20年ぶりに復活する伝説の喫茶店「ばんぢろ」、本日オープン
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戦後間もない1949年に創業し、福岡・博多の地でコーヒー文化を広めるのに一役買った喫茶店「ばんぢろ」。98年に惜しまれつつも閉店したその伝説の名店が本日28日、上川端商店街(福岡市博多区)内で復活した。同店を復活させたオーナーバリスタの徳安善孝氏(38)は、初代オーナーである故・井野耕八郎氏の孫にあたる。
生粋の珈琲職人として知られる井野耕八郎氏は、コーヒーに対して高い理想を掲げ、コーヒー抽出の確立に半生を捧げた人物。今では広く普及しているドリップ式抽出法(低温抽出法)を独自の発想で確立し、普及させたのも井野耕八郎氏だ。61年に昭和天皇・皇后両陛下が佐賀県唐津市を訪れた際に、当時の佐賀県知事からの依頼で井野耕八郎氏が招かれ、両陛下にコーヒーを淹れる栄誉にあずかったこともある。
そんな井野耕八郎氏が49年に東区箱崎で創業した喫茶店「ばんぢろ」は、西鉄ライオンズの選手や、俳優の高倉健氏が訪れたこともある名店。かつては複数店を展開した時期もあったが、チェーン店出店の影響など時代の変化の波に晒され、2代目の井野和人氏が98年に中央区天神4丁目にあった店を畳み、約半世紀の歴史に幕を下ろした。今回、「ばんぢろ」を復活させた徳安氏は、生まれも育ちも生粋の博多っ子。実は徳安氏の実家は、福岡・博多では知らない人がいない老舗中の老舗のうなぎの名店「博多名代 吉塚うなぎ屋」。「ばんぢろ」初代オーナーの井野耕八郎氏は母方の祖父にあたり、2代目の井野和人氏は叔父にあたる。
徳安氏は、地元の福岡高校、九州芸術工科大学(現・九州大学)へと進んだ後、一時は「映画の仕事をしたい」と大阪の専門学校に通ったこともあった。だが、幼いころに憧れた喫茶店「ばんぢろ」が閉店となると、「いつかは自分の手で『ばんぢろ』を復活させたい」との想いを抱き、映画の世界への夢を断念。コーヒーに関する勉強を始めるとともに、接客業の基礎を徹底的に身につけるべく、地元の名門ホテル・ホテルオークラ福岡に勤務した。
ホテル勤務時代にはコーヒーに関わる仕事も手がける傍ら、(一社)日本スペシャルティコーヒー協会のアドバンスドコーヒーマイスターの資格やイタリア国際カフェテイスティング協会認定のエスプレッソイタリアーノテイスターなどの資格を取得。また、祖父の遺した著書を読み込み、2代目の叔父・和人氏からは「やりたいようにやれ」とのお墨付きを得た。
そして、近年のスペシャルティーコーヒー(SC)と称される「質の高いコーヒーを楽しむ」スタイルの登場に、「今こそ、新たな挑戦をする絶好の機会」(徳安氏)と腹を決め、今回の「ばんぢろ」復活へと漕ぎ着けた。復活にあたっての新たな店名は、祖父と同様に“淹れる(Brew)”ことへのこだわりを冠した「Brewer’s Coffee ばんぢろ」だ。「幼いころから憧れてきた祖父の技術をきちんと受け継ぎつつも、自分なりのコーヒーの淹れ方も追求していきたいと思います。ですが、まずはお客さまにお出しする目の前の1杯を淹れることに、全力を注いでいきます」(徳安氏)。
名店「ばんぢろ」の3代目として、見事同店を復活させた徳安氏の挑戦は、まだまだこれからも続く。
【坂田 憲治】
■Brewer’s Coffee ばんぢろ
所在地:福岡市博多区上川端町4-253-2F
TEL:092-981-3335
営業時間:午前11時~午後10時
定休日:火曜日法人名
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