巨大な敷地を生かせる再生請負人は現れるのか~伊都ハイランドパーク(前)
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福岡市都心部からJR筑肥線もしくは都市高速を使って約40分――。糸島市に入ると景色は一変する。眼前に広がる美しい緑と青い海。豊かな自然が生み出す景観は、糸島市の交流人口増加に寄与する貴重な財産だ。観光地としての知名度が高まる糸島市だが、宿泊客数の伸び悩みが課題となっている。「伊都ハイランドパーク」の再生は、この課題解決策となる可能性を秘めている。
バブル崩壊とともに破綻
糸島郡志摩町大字岐志(現・糸島市志摩岐志)。夏ともなれば、多くの海水浴客や野外音楽イベント「Sunset Live」への参加者で賑わう「芥屋海水浴場」や、KBCオーガスタが開催されるなど高い知名度を誇るゴルフコース「芥屋ゴルフ倶楽部」に近いこの場所に、リゾート住宅地があるのをご存じだろうか。その名は「伊都ハイランドパーク」。
「伊都ハイランドパーク」の始まりはバブル期まで遡る。当時、多くの不動産業者がリゾート開発を手がけるなか、志摩町でもそれは起きた。リゾート開発の動きを見せたのは1970年9月設立のエメラルド観光開発(株)(本社:福岡市中央区、原田敏明代表)。「芥屋エメラルドパーク」として同所で開発をスタートさせ、約45万m2の広大な敷地内に分譲別荘地、リゾートマンション「エメラルドビラ」、会員制ホテル「エメラルドリゾートホテル」を展開。91年には、九州では初となるタラソテラピー(海洋療法、海洋気候のなかで、海水・海藻・海泥などを用いて行う治療)施設をオープン。同施設はS造2階建ての延床面積約660m2。総工費約6,000万円。白い船を想起させる外観の同施設には医師が常駐し、夏には「海の家」としても解放された。93年にはエメラルドリゾートホテル(全50室)の入会権利金を380万円(内訳:入会金130万円、預かり金250万円)に設定し売り出している。
積極的な事業展開はバブルの追い風を受け、400名を超える別荘会員、90名を超えるホテル会員の獲得につながった。同社の業績も別荘地の売買・不動産管理を主に、90年代後半は4億円台の売上高で堅調に推移していった(右表参照)。
しかし、バブルが崩壊すると高額な入会権利金を支払ってまでリゾート住宅地に住もうと考える者も減り、同社の事業計画も行き詰っていった。預かり金の償還を求める会員への対応、開発にともなう14億円超の借入負担が重くのしかかり、業績は低迷。2000年代に入ると、売上高は2億円台まで減少し、02年8月期には約1億4,700万円の最終赤字を計上。その後も業績は伸び悩み、同社は07年11月末までに事業を停止し、破産という結末を迎えた。
20億円で株式譲渡提案中
破産したエメラルド観光開発(株)から不動産を買い取り、現在、「伊都ハイランドパーク」として同リゾート住宅地の管理を手がけているのが、(株)伊都ハイランドパークである。同社の代表を務める牛島中(うしじま・なか)氏は私立総合大学のパシフィック大学(米カリフォルニア州)卒。東京など福岡県外への出張が多く、プロゴルファーとしても活動しており、かなりの行動派と見られる。
同社は、同パーク内の400を超える戸建住宅やマンション、ホテルなどの不動産管理を手がけており、管理料収入がメインと推察される。また、牛島代表は不動産の管理・販売を手がける(株)サスケハナ(所在地:同パーク内)の代表も兼任しており、同パーク内で新規・中古住宅の分譲を行っている。
サスケハナの業績は12年7月期時点で、売上高5,814万円(内訳:家賃収入3,433万円、管理料2,285万円、仲介料95万円)、経常損失3,793万円、当期純損失3,441万円で、1億4,147万円の債務超過に陥っている。
こうした状況のなか、同社は現在、伊都ハイランドパークの株式譲渡の提案を行っている。株式の売却希望額は20億円。牛島代表は同社の将来的収益事業として、(1)管理運営事業(水道事業も含む)、(2)新規分譲戸建開発事業(既存物件の再開発も含む)、(3)既存ホテルや新規店舗(レストランなど)への賃貸事業の3つを柱としていくとしている。
(つづく)
【代 源太郎】<COMPANY INFORMATION>
代 表:牛島 中
所在地:福岡県糸島市志摩岐志1513
設 立:2007年10月
資本金:1,000万円
TEL:092-328-3636関連キーワード
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