2024年12月22日( 日 )

英進館が角川ドワンゴ・N高校と提携~新しい「進学校」のかたちを模索

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 福岡市に本部を置く英進館(筒井俊英社長)が11月1日、通信制高校「N高校」と提携、来春の開校へ向けた準備を進めている。

 N高校は2016年4月に開校した、全国を対象にした広域通信制高校(本部:沖縄県うるま市)。出版・インターネット事業のカドカワが設立した学校法人角川ドワンゴ学園が運営し、今年10月時点で4,313人が在籍する(学園発表)。授業や課題などの提出をインターネットで行う通信制課程に加え、東京や大阪など複数の校舎に通って授業を受ける「通学コース」も設置する。
 課外活動の「ネット部活」では、プロゲーマーを目指す生徒向けに「格闘ゲーム部」を置き、ゲームソフト「ウィニングイレブン」を用いたサッカー部の顧問には、サッカー元日本代表の秋田豊氏が就任している。

 英進館は1979年創業、九州最大手の学習塾で、県立修猷館高校に代表される「御三家」やラ・サール高校(鹿児島市)などへの高い進学実績で生徒を集めてきた。現在では、県内にとどまらず九州全域に「教場」と呼ぶ教室を進出させている。
 中央区薬院に新設される予定のN高校英進館クラスは、テストに合格した生徒が通う選抜制。午前中はN高校のカリキュラムに沿った授業を受け、午後は英進館本部校舎に移動して難関大学受験に特化した授業を受ける予定だ。
 英進館高等部の担当者によると、進学校に入学しても学校生活に馴染めずに中退する生徒が、各高校で毎年複数名ずついるといい、「大学進学の能力はあるが、高校に通えない」生徒をどうサポートするか、懸案事項だったという。これまでにも高校を中退した生徒を指導して東京大学合格まで導いた経験もあるため、英進館クラスの指導内容には自信をにじませる。

 N高校通学コースの生徒が通うキャンパスは、現在の東京と大阪に加えて、来春には福岡のほか4県で開校する予定。

 ヨーロッパの多くの高校で学校単位の部活動は存在せず、スポーツは基本的に地域クラブで行うため下校時間が早い。体育祭などの大きな学校行事もほとんどなく、「個」で判断して行動することが学校生活の基本だ。中国や韓国では、学校は「勉強の場」として徹底されているため、同じく部活動はほぼ存在しない。
 日本においては、学校行事や部活動を含めた「学校文化」で人を育てるという発想が主流だが、上にあげた例を見るまでもなく、その考え方に普遍性はない。むしろ、体育祭は集団行動を体に染み込ませるための「教練」の場で、「社畜養成のために必要」と皮肉る者もいるくらいだ。
 N高校と英進館の提携は、「午前中は学校の授業、午後は英進館で受験対策」というシンプルで、しかも大学受験に目標を絞るのであれば超効率的な体制を実現した。早々に実績を残すのは間違いないだろう。もちろん、「学校は勉強だけするところではない」という意見も理解できる。それならば、「学校文化」を楽しみたい生徒は高校へ、それが生きづらさにつながる子や効率性重視の生徒は通信制へ。要するに「選べる」ことが重要なのだ。

※通信制高校
 通信制高校は学校教育法4条に規定された「通信による教育を行う課程」を指し、全国の高等学校数が減少を続けるなかで設置数、在籍数ともに増え続けている。2015年度の学校基本調査によると、学校数は25年間で約2.6倍増の全国237校、生徒は3万人増の約18万人が在籍している。
 2003年に高等学校学習指導要領が一部改正され、それまで通信制課程について「ラジオ放送又はテレビ放送」による学習を対象としていたものが、ラジオ放送、テレビ放送に加えて「その他の多様なメディアを利用して行う学習」まで対象を広げていた。

 

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