裁判例に学ぶ労働時間管理(7)~資料以上の労働時間決定
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タイムカードやシフト表など、労働時間管理の目的で作成された資料があるにもかかわらず、その時間よりも多く、労働時間が認められる場合はあるのでしょうか。
タイムカード打刻後の業務
まず、典型的な例としていえば、タイムカードを打刻した後に、何らかのことを行わせているような場合が問題となります。裁判になれば、従業員から、それについても業務であり労働時間であると主張されることが一般的です。
たとえば、トラックの運転手が、帰社後、日報の作成などを行い、使用したトラックを別の場所に移動することとなっていた場合について、裁判所は、「従業員は、品川本社にトラックを運転して戻り、車両チェック、入金業務、日報の提出をすること、…使用したトラックを鮫洲事務所に戻すことも業務に含まれること、…品川本社から鮫洲事務所への移動時間は平均20分間であることを各認めることができる」と判断し、使用したトラックを品川本社から鮫洲事務所へ移動する20分間についても、原告らの労働時間に含まれると判断しました(2012年9月4日東京地裁判決)。つまり、タイムカードの打刻時刻にプラスして、20分間が労働時間として認められました。この20分間という時間については、客観的な記録があるわけではないようですが、従業員の供述に基づき認定がされています。
シフト交代前後の引継などの業務
また、従業員のシフト(勤務時間帯)が決まっていたことから、それを超えて業務を行なったことはないとの会社の主張に対し、「原告ら…は、自らに割り当てられたコマの担当時間の前後においても、…引継ぎなどを行っていた…のであるから、その担当時間の前後における原告らの業務が存在しなかったなどとはいえない」と判断し、その前後の時間についてもタイムカード記載の出退勤時間によって労働時間と認定しました(13年9月11日東京地裁判決)。
業務の実態との整合性が大事
会社が主張すれば、記録がなくとも、業務の実態を踏まえて休憩時間が認定される場合があるように、裁判所は、従業員が主張する以上は、何らかの判断をしなければなりません。その際、タイムカードなどに残された時刻に関する記録だけでなく、従業員が述べる業務の実態からも、労働時間を認定する場合があります。
以上見てきましたように、タイムカードなどの記録があるからといって、必ずしも労働時間が記録通りに認められない場合があります。私の経験では、使用したトラックの洗車時間が問題となったことがありますし、店舗の開店閉店前後のほんの些細な時間が問題となったこともあります。
タイムカードがあるからといって、あるいは、シフトを組んでいるからといって、それだけでは安心できません。その資料から読み取れる労働時間が、業務の実態にあったものかどうかが、重要だということが理解できると思います。
(つづく)
<プロフィール>
中野 公義(なかの・きみよし)
なかのきみよし弁護士事務所
1977年4月生まれ。労働基準監督官、厚生労働省本省(労災補償、労使関係担当)勤務の経験から、労働事件に精通している。
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