2024年12月05日( 木 )

生活保護見直しで閉ざされる子どもたちの未来

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 安倍政権による「弱者イジメ」が、また一段と加速することになる。

 生活保護のうち基本とされる「生活扶助」が、2018年10月から3年かけて段階的に見直される。これにより全受給世帯の約3分の2で減額となり、なかでも約15万世帯とされる子育て世帯(18歳以下の子どもがいる世帯)の約4割近くが減額となる見通しになった。また、子育て世帯のうち約7割とされている「ひとり親世帯」への「母子加算」が平均2割カットされるほか、児童手当にあたる「児童養育加算」も一部が減らされる方針だ。

 今回の見直しにより、ひとり親世帯に支給される母子加算は、現在の平均月2万1,000円から約2割減となる1万7,000円へと減額。児童養育加算は、対象が現行の「中学生まで」から「高校生まで」に拡大される一方で、3歳未満では支給額が1人あたり月1万5,000円から1万円へと減額される。一般家庭への児童手当は3歳未満で1万5,000円が支給されており、生活保護受給の子育て世帯との不公平感がぬぐえない。さらに、義務教育に必要な費用を賄う「教育扶助」は、これまでの定額支給から実費支給へと変更され、使途もクラブ活動に限定。これまで認められていた参考書代などは含まれないことになる。

 「生活保護制度が、健康的で文化的な最低限度の生活を保障したうえで、自立を促すための制度であるならば、扶助される金額を減らしてしまっては意味がないと感じます」と話すのは、小学校高学年の娘をもつ福岡市在住の30代シングルマザーのAさん。
 幸いAさんの場合は、子育てにおいて同居の実母の手助けを受けられていることや、自身が正社員勤務で安定した収入を得られていることもあり、児童扶養手当の一部支給は受けているものの、何とか貧困を感じない生活を送ることができているという。だが、Aさんのようなケースばかりではない。シングルマザーのなかには、子育てへの手助けが得られず、時間的な関係からパート勤務を余儀なくされている人も数多い。パート収入だけでは、児童扶養手当を満額で支給されていても金銭的な余裕はなく、生活は切り詰めざるを得ない。また、子どもが小・中学生のうちは育成会(保護者の任意団体)の要請による校区内パトロールなどもあり、シングルマザーだからといって、断ることが難しいのが現状だという。
 「日々の生活に追われ、時間的にも金銭的にも余裕がなく、心身ともに疲労困憊の状況にあるシングルマザーの方も多いと聞きます。まして生活保護を受給されているシングルマザーになると、さらに厳しい状況にあるのではないでしょうか。そうした方々の場合、目の前のことだけで精一杯で、我が子の明るい未来を思い描くことも難しいように思います」(Aさん)。

 生活保護世帯の子どもの数は約28万人で、そのうち母子世帯の子どもの数は18万人以上とされる。政府は今回の生活保護の見直しにより、3年かけて計約160億円の国費を削減する方針だが、そのしわ寄せは貧困世帯の子どもたちに行くことになる。
 昨年9月25日、衆議院の解散を表明した際の会見で、安倍首相は「子育て世代への投資を拡充する」として消費税の使途の見直しを口にし、「どんなに貧しい家庭に育っても、意欲さえあれば専修学校、大学に進学できる社会へと改革する。所得が低い家庭の子どもたち、真に必要な子どもたちに限って高等教育の無償化を必ず実現する決意です」と述べていた。だが、実際にやろうとしていることはどうだろうか――。“羊頭狗肉”とはこのことである。

【坂田 憲治】

 

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