2024年12月22日( 日 )

元「鉄人」衣笠氏が斬る!~ルーキー時代、初めてのキャンプの思い出

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 日本ハムに入団した清宮健太郎選手、甲子園大会で6本の本塁打を記録して広島カープに入団した中村亘佑選手など、連日キャンプを控えた話題の新人選手たちが、大きく新聞やテレビで報道されています。
 いよいよキャンプが近づいてきたという盛り上がりを感じる時期になりました。

 各チームとも大きな期待をかけているドラフト上位の選手が、どんな活躍をしてくれるのだろうか。ファンの方々とともに球団スタッフ、とくにスカウトの皆さまには心配な時期でしょう。
 キャンプを迎えるにあたり、これだけ情報が発達している時代ですから、先輩やチームスタッフがキャンプの準備についていろいろと教えていることと思いますが、ちゃんとしてきているだろうか?やり過ぎて故障してないだろうか?どんな顔をしてキャンプ初日を迎えてくれるか?球団のスタッフは心配な時期だと思います。

 私はこのキャンプの時期を迎えると毎年「後悔」と「反省」の時期を迎えます。そんな過去の出来事を思い出してしまいます。
 1965年1月30日、京都駅から夜行列車に乗り込み、深夜には広島から他の選手、スタッフの方々が乗り込んで、翌日のお昼前に宮崎駅に到着するというスケジュールで移動。宮崎駅からはバスに乗り、宿舎のある日南市に向かう。到着後荷物の整理をして、夕方食事後に白石勝巳監督からキャンプに備えた訓示があり、さらにそれぞれのコーチから練習スケジュールの説明があってその日は終了。
 気持ちは昂ぶるのだけれど、不安がいっぱい、初めて顔を見る選手の皆さまがなぜか怖い。身近な年齢の選手もいるけれど、ほとんどのレギュラーメンバーとは大きく年齢が開いている感じで、とくに翌日からご一緒させていただく捕手の田中尊さんは10歳ほど上のようだし、一塁の藤井弘さんは一回り上のように見える。大きい体で色が黒く、どう見ても怖い。
 二塁の古葉竹識さんは若く見えるが、三塁の興津立雄さんはなんとなく近寄りがたい感じで、トレードで来られた今津光男さんは無口な選手に見えた。
 外野手の山本一義さん、大和田明さん、森永勝也さんはあまり話ができそうになく、どう見ても不安ばかりの初日を迎えていた。
 夜寝るときに今年入団した高校出の選手たちが大部屋の隅に集まり「プロ野球は怖いところみたいだね~」と愚痴をこぼすのが精一杯でした。

 今の選手を見ているとみんな度胸がよく、先輩に向かって堂々と自分の意見を話している場面を見ると時代の流れを感じます。
 ここで大きく違うのは、今の選手はマスコミの発達により多くの情報を持っていて、十分な練習を積んで2月1日を迎えているということ。我々の時代はろくにニュースも知らないで、キャンプから練習を始めるものだと思っていたために戸惑うことばかりでした。
 ただ共通しているところは、高校生の体はまだ成人の骨格に成長していないということです。男性の骨格が固まるのはだいたい22歳ぐらい、多少の個人差がありますがこの辺りでしょう。無理をすると壊れて、怠けると成長しません。難しい年代ということは同じでしょう。
 私は何の準備もなく練習に参加したために3日で肩を故障してしまい、毎年この時期になると痛みと付き合わなければならない肩になってしまいました。
 キャンプでは十分に体の準備をして、自分の練習目標をしっかりと見定めて、コーチの方に相談しながら怪我のないように過ごしてほしいものです。
 そしてもう1つ、シーズンが始まって1年間試合に出してもらい続けるための近道は、「守備の安定」だということ。これを忘れないようにしたいものです。
 ともすれば打撃を磨いて打てるようになれば試合に出られると見えますが、1年間試合に出してもらうには安定した守備力が必要なのです。これを培うのが、キャンプの大きな目標です。
 1カ月のキャンプ地での練習で怪我なく練習できればそれなりの体力がつきます。まずはそこを身近な目標として考えて欲しいと思います。

2018年1月22日
衣笠 祥雄

 

関連キーワード

関連記事