元「鉄人」衣笠氏が斬る!~プロ野球、キャンプスタート(前)
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今年もプロ野球が始まります。多くのファンが待ちに待ったキャンプです。キャンプは2月1日からですが、私が注目しているのは各チームが1月31日をどう過ごすかです。
最近は一部の選手はもうキャンプ地に入り、練習に入っているために地元から全員が同じ乗り物に乗りキャンプ地に向かうということが少なくなりました。我々の時には全員同じ交通手段で1月31日にキャンプ地に出発、到着後には地元の方々が歓迎会を計画してくださり、全員が無事にキャンプを終えることができるように、参加者全員から励ましの言葉をいただき、空港や駅で和やかな時間を過ごすことが慣例でした。
そして宿舎に到着して、1軍宿舎、2軍宿舎にわかれて自分の荷物を整理して、夕食後に1軍宿舎で全体ミーティングが始まります。最初に監督が演台に上がり、今年の目標である「優勝」、ここに向かって全員で頑張りましょうという話をします。この言葉がキャンプの一番大きな目的です。
そして、このキャンプでの注意点、練習の目的、怪我をしないように、事故のないように、さまざまなことをコーチから伝達されてミーティングは終了。それぞれの宿舎に帰り翌日2月1日の準備に入ります。
途中で1年間ご無沙汰していた馴染みのお店に少しだけ顔を出して「またよろしくね!」と挨拶をして、部屋に帰ります。そんな時間の使い方をするのが、我々の時代のキャンプイン前日、1月31日の予定でした。今はどうなんでしょうか?
23年間、23回のキャンプのなかでこの1月31日を強烈に覚えているのが、1975年です。カープは初めての外国人監督を迎えたということもあり、多くのマスコミの方も集まりました。当然いままで担当されていた地元のマスコミ陣も熱い視線を送るなか、この日を迎えました。
夕食後のミーティングの初めに姿を現したのが、昨年の秋に監督に就任したジョー・ルーツ監督です。その頭には真っ赤な帽子が乗っていて、真ん中に「C」のマーク。メジャー・リーグのシンシナティ・レッズのように見える帽子をかぶっていました。我々が「アメリカの人はやはり変わっているね」と話している間に、彼は演台の前に立ちました。
第一声は「赤は戦う色である」という声。何をいうのかと思っていると、「今年は優勝するために戦うのだ!」と続きました。たしかにその通りですが、ここまでハッキリと「優勝」というパフォーマンスをした監督は初めてでした。
何より真っ赤な帽子。小学校の運動会で被ったのが最後でした。「どうしよう?」そんな戸惑いをものとすることなく監督の顔は真っ赤になり、言葉にはさらに熱が入ってきます。
この衝撃は忘れられません、ここから始まった連日のミーティングで彼はいつも同じことを言いました。
「君たちにはまだ優勝に必要な知識が足りない、だからこのミーティングで勉強しなさい」。
グラウンドに出ると「優勝に必要な技術をこのグラウンドで練習しなさい。優勝に必要でないことはする必要がありません」。「優勝」という言葉を、このキャンプで何十回聞いたことでしょうか。2018年1月31日
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