2024年11月19日( 火 )

新体制、『脱カリスマ経営』へ 4年以内に関東進出~コスモス薬品(後)

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 (株)コスモス薬品は2017年8月下旬、創業者の宇野正晃社長(70)が代表取締役会長になり後任社長に柴田太取締役経営企画部長(45)が就任する新体制を発足させた。創業社長の下で売上高5,000億円超、ドラッグストア5位に躍進したが、さらなる成長を見据え若返りを図る。新体制は4年以内に関東進出を掲げ全国チェーンへの脱皮を目指す。関東圏はウエルシアHD、マツモトキヨシHD、サンドラッグの3大手の本拠地で競争力の真価が試される。大量出店に対応した人材育成が急務になっている。

小商圏に大量高速出店

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 前期末店舗数は827店と5年前比で370店、81.0%増加した。この間の売上伸び率は68.8%。今期は97店を出店、スクラップ&ビルドによる閉店を7店予定しているため純増ベースでは90店になる。九州の店舗構成比は5年前の351店、77%から504店、61%に低下。代わって中国地方が45店から131店、四国46店から98店に増加。5年前には13店だった関西は86店に達した。

 出店方法もオーソドックス。「インクが染み出すように」(同社)ドミナントを形成しながら、営業地域を拡大していく。遠隔地に進出することはしないので物流・販促の効率は高い。16年春から中部地区に進出、前期末で3県8店になった。店舗数が100店前後になると地域ごとに物流センターを設置する。

 地盤の九州では商圏人口1万人に1店を目安に店舗密度を高める。当然自社内競合は起きるが、意に介さない。大手ドラッグは出店競争を繰り広げており、九州では同社と同じビジネスモデルのドラッグストアモリが追撃している。優良な立地を先に抑えることで競争相手の進出を防ぐ狙いもある。

関東進出が射程に

 4年以内に関東に進出する。昨年末段階で店舗の東端は岐阜県。静岡県を経て北陸・甲信越を飛び越え、千葉、埼玉、群馬に出店する構想を描く。標準店舗面積を確保しにくい神奈川県と東京都は難しいと見ている。

 関東進出は人材確保のためからも避けて通れないとしている。九州の大卒新卒者だけでは充足できなくなっているという。必要な人材を確保できないと企業成長のボトルネックになる恐れがある。

 九州、中・四国、関西と同業態の類似した店がなく無人の野を行くが如きだったコスモスだが、関東圏はウエルシア、マツキヨ、サンドラッグなどの大手が本拠を置き、競争は激しい。全国展開の成否を占う試金石となる。

販管費率は上昇傾向

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 課題がないわけではない。コスト競争力の源泉である販管費率は13年5月期の14.05%を底に上昇傾向にあり、16年同期は15%台に乗り、前期は15.48%と0.23ポイント高まった。社歴を重ねるうちに人件費などの販管費が上昇していくのは流通企業の宿命で、価格破壊の旗手として登場したかつてのダイエーやイオンも同じ過程をたどった。

 前期の販管費は、大量出店もあって14.1%増と売上の伸びの12.4%を上回った。中でも福利厚生費を含めた人件費は人手不足で17.5%増え、売上高に占める比率は7.19%と0.31ポイント上昇した。パート・アルバイトの時給引き上げで人件費の増加は続いており、このあおりもあって18年5月期の経常増益率はゼロになる見通し。

 前期の売上高経常利益率は4.89%と、ツルハHDの6.69%、マツキヨ5.76%、サンドラッグ6.60%に比べ見劣りする。3社とも食品の扱いが少なく、粗利益率が高いことが原因。ツルハは28.98%、マツキヨは29.58%で、ダイレックスを傘下にもつサンドラッグも24.74%あり、コスモス薬品の19.90%と5~9ポイントの開きがある。利益率の差を埋めるには販管費率の上昇を抑えることが欠かせない。

食品比率55%に

 食品比率は10年前の46.5%から55.6%と9.1ポイント上昇した。これにともなって粗利益率も低下傾向にあったが、過去4年間は上昇している。前期は19.60%と0.48ポイント改善し、過去5年では最高になった。円安を機に採算割れ商品の販売を縮小したことが大きい。

 食品の粗利益率は約13%と見られ、販管費率の15.48%を下回る。5割近い粗利のある医薬品の売上構成比は10年前の18.8%から15.4%に低下した。低粗利の食品の売上増は同社にとって痛しかゆしの面がある。

 18年5月期は売上高が9.4%増の5,500億円、経常利益は横ばいの248億円を見込む。人件費増や食品・日用雑貨の価格競争激化による粗利益率の悪化が利益拡大の頭を抑える。第1四半期(17年6~9月)は粗利益率の悪化で5.9%の減益になった。当期純利益は前年あった熊本地震による地震保険収入の10億7,300万円がなくなるため170億円と6.7%の減益になる。

 当面する最大の課題は人材確保。第2種医薬品の販売に必要な登録販売者は取り合いになっている。人材を確保できないと出店に影響する。幹部社員の育成も急務になっている。カリスマ経営者に依存したトップダウン型の経営から権限と責任を明確にしたボトムアップ型の組織の経営へ転換期を迎えていることだけはたしかだ。

(了)
【工藤 勝広】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:宇野 正晃、柴田 太
所在地:福岡市博多区博多駅東2-10-1
設 立:1983年12月
資本金:41億7,856万6,600円
売上高:(17/5)5,027億3,200万円

 
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