九州トラック運送の雄、アジアをにらみ多角化に挑戦(後)
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(株)博運社
人材に積極投資
社内体制の充実にも取り組んできた。支店長・営業所長などの現場トップが収益管理から荷主開拓などの営業、現場作業の管理まで一手に引き受けていたのを改め、収益責任は「統括長」と呼ぶ、2~3拠点を担当する新設の管理職に負わせるようにしたのはその1つ。提案力が求められる営業は本社に統合した。現場管理者を本来の作業管理に集中させるのが狙いだ。さらに、ミドル以下の管理職は業績で評価するのでなく、課題をどう達成したかの目標管理に切り替えたり、専門職制度を導入するなど、改革は広範囲におよんでいる。
「おかげで収益は改善され、財務体質は見違えるほど良くなった。ただ、これは大型の設備投資をしなかった結果で、決して満足していません」と眞鍋社長は話す。営業拠点や倉庫、輸送力増強への投資を抑えたことで売上高は伸び悩んでいる。内部充実と財務体質改善が一段落したことから、新たな成長戦略を追求する段階にきたといえるだろう。
アジア進出にらみベトナムに拠点
将来への布石と位置付けるのが人材投資。トラック運送業界は深刻な人手不足に直面している。そこで着目したのが外国人労働者。17年7月、ベトナム・ホーチミン市に人材確保の拠点となる現地法人「博運社ベトナム」を設立した。ベトナムに狙いを定めたのは、日本で技術やビジネスを学びたいという高学歴の若者が多いため。17年から国内の日本語学校で学ぶ留学生の採用を始めた。同社がリフトなどの免許取得も支援する。18年4月、現地で事前に日本語研修を済ませた第一陣の4人が来日、9月の第2陣3人に続き19年春は10人が決まっている。全員が4年制の大学卒で、来日後は日本語学校で学業に専念する傍ら、アルバイトとして博運社の業務に従事。将来は本人の適性を見て幹部候補社員として採用することも検討している。
ここまで手厚く優遇するのは、将来のアジア進出をにらんでのことだ。「彼らが帰国後、現地で物流事業を始める場合は当社が資金を提供してもよい。物流にかかわらず、たとえば少子高齢化の進む日本に人材を送り出す事業も考えられる」(眞鍋社長)。早期に人材を養成し将来、東南アジアで事業展開する際の先兵役になってもらう狙いだ。
女性戦力を積極活用
女性戦力も積極活用する。男性の職場というイメージが強い物流業だが、「本当にそうなのか疑問に思い、男性にしかできない仕事を洗い出してみたら、意外に女性にもできる仕事が多かった」と眞鍋社長は指摘する。かつて、女性は全従業員の5%程度だったが、今では本社に限ると約60人のうち、3分の2の約40人を占め、デスクワークに欠かせない存在。
同社長は人手不足解消には外国人労働者とともに女性が鍵を握ると指摘する。肉体作業の多い現場でも女性労働力を近く投入する予定だ。
物流に次ぐ新規事業は模索中だ。社内ベンチャー制を導入し、新規事業を発案した社員と共同出資で会社を設立するなどの奨励策を用意している。眞鍋社長自ら事業のシーズ(種)を求めて九州の大学に足を運び、産学連携の可能性を探っている。「物流が本業であることは今後も変わらないが、利益を上げているうちに将来に向けての成長の種をまく」と意気込む。
(了)
<COMPANY INFORMATION>
代 表:眞鍋 和弘
所在地:福岡県糟屋郡志免町別府北3-4-1
設 立:1957年1月
資本金:8,918万1,300円
TEL:092-621-8831
URL:http://www.hus.co.jp<プロフィール>
眞鍋 和弘(まなべ・かずひろ)
1960年5月29日福岡市生まれ。中央大学理工学部中退。85年6月、博運社に入り、92年に取締役、2007年に専務を経て14年2月に代表取締役社長に就任。関連キーワード
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