再編完了で利益重視路線が鮮明に~「総合飲料メーカー」へ脱皮なるか(前)
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コカ・コーラボトラーズジャパンホールディングス(株)
東西の大手ボトラーが経営統合して発足したコカ・コーラボトラーズジャパン(CCBJ)の2017年12月期決算は、売上高で計画を下回ったが、利益面では営業利益、経常利益とも計画を上回る実績を残した。売上規模を追う必要がなくなり利益重視の姿勢が鮮明になったといえる。米国コカ・コーラカンパニーへの影響力が増し、商品開発など意思決定に自由度が高まったことで質的転換を図ろうとしている。
明確になった「花より実」
コカ・コーラウエストとコカ・コーライーストジャパンの経営統合によりコカ・コーラボトラーズジャパンHDが発足したのは2017年4月。9カ月決算となる17年12月期決算の売上高は9,000億円に届かなかったが、これを1月から合併していたと置き換えて試算すると、9,916億円となり、前年の1兆127億円から2%減収となった。一方で営業利益421億円は約17億円の増益だ。
ウエスト社は規模でイースト社に劣るものの、収益力や企業体質では勝っていた。これが、交換比率(イースト社1:ウエスト社0.75)となって現れウエスト社を存続会社とする要因となった。イースト社との統合で初年度はある程度収益力が低下しても仕方ないはずだが、コカ・コーラボトラーズジャパンHDの売上総利益率51.6%は前年のウエスト社にほぼ匹敵する。47%台で推移していたイースト社の売上総利益率は横バイ。見方によってはウエスト社の効率がさらに上がったことになるが、単なるコスト削減だけでなく、トクホや機能性表示食品など付加価値の高い商品も利益率向上に寄与している。また、営業増益の要因となった販管費削減は、会計基準統一により減価償却が費減される数値上の減少もあったものの、物流費など実際のコスト減につなげた。異なる組織体制や企業風土を超えて周到な準備がなされていたことがわかる。
キューサイ買収で得た教訓と財産
ウエスト社が再編の過程で迎えた転機のなかでも特筆すべきは10年8月に約360億円を投じた健康食品のキューサイ(株)(福岡市中央区)の買収だ。キューサイはピーク時、売上高400億円まで拡大していたが、原料の表示問題や競合の増加などで買収前年は売上高287億円まで落ち込んでいた(営業利益は24億円を確保)。異分野への参入に難色を示す米コカ・コーラカンパニーを押し切るように買収に踏み切った背景には、当時の飲料業界の事業環境の厳しさがある。ウエスト社は当時からコカ・コーラのボトラー各社では抜群の財務体質を誇っていたが、09年12月期は売上高約3,700億円に対して営業利益は22億円、同利益率は0.6%に停滞。特別損失を計上したことで最終損益は上場以来初となる赤字に転落していた。08年にはリーマン・ショックが発生。消費が低迷するなか単価維持できる自販機の販売量も減少した。ウエスト社は付加価値の取れる商品の確保が急務だった。この際通販を活用する販売経路など、ウエスト社に健康食品会社経営のノウハウがなかったこともあり経営は旧経営陣が継続したが、マイナス面も出た。キューサイ子会社の日本サプリメント(株)の景品表示法違反による特定保健用食品(トクホ)取り消しだ。
ウエスト社は自ら5回におよぶボトラー再編を仕掛けてМ&Aを主導した。いわば、企業買収の専門家だ。ただし、それらは同業者間のことであり、それぞれのビジネスモデルは熟知していた。加えて各社のオーナーや大株主は地元の名士や大手企業が多く、「統合・コンプライアンスは守られて当然」という意識があったと見られる。健康食品業界もコンプライアンス意識の高い企業は多いのだが、キューサイの下に連なる子会社の風土や気質をとらえきれていなかった。日本サプリメント自体も06年にキューサイが買収した企業。トクホ取得はそれ以前の01年から05年にかけて成された。「ペプチド茶」など6商品が認定を受けていたが、昨年、有効成分が表示より少量しか含まれておらず全商品が認定取り消しとなった。昨年8月末をもってキューサイの藤野会長が退任。その後、(株)ドクターシーラボ出身の神戸聡氏が後任を務めている。
こうした経緯を見ると、キューサイの買収額約360億円は高く映る。しかし、M&A先の子会社の法令意識の見極めが重要なことを教訓として得ただけでなく、市場参入の足がかりを得、商品開発で成果を生み出しつつある。
その先駆けとなったのが、16年12月に発売されたキューサイとウエスト社初のコラボ商品「ミニッツメイド おいしいフルーツ青汁」。原料は農薬・化学肥料を使用せず販路は近畿エリアの自販機とキューサイの通販サイトのみという挑戦的なものだった。以来、かつての炭酸飲料や既存商品にこだわったイメージが払しょくされ、ノンカフェインや着色料、保存料不使用など健康志向の商品を続々と市場に投入しており、健康食品会社をもつ意義は大きさを増している。
(つづく)
【鹿島 譲二】<COMPANY INFORMATION>
代 表:吉松 民雄ほか1名
所在地:東京都港区赤坂9-7-1
登記上:福岡市東区箱崎7-9-66
設 立:1960年12月
資本金:152億3,199万円
売上高:(17/12連結)8,726億2,300万円(第2四半期より合算)関連記事
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