今年も近づく山笠の季節 太閤町割以来の伝統が息づく(前)
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今年もいよいよ山笠のシーズンが近づいてきた。7月1日のお汐井取りから追い山までの15日間、博多の街が熱く盛り上がる博多祇園山笠。2016年にはユネスコ無形文化遺産に登録され、全国のみならず国際的な注目も高まった山笠。博多祇園山笠振興会・広報担当の正木研次さんに、今年の見どころや山笠の魅力について聞いた。
(聞き手:弊社代表取締役・児玉 直)
ユネスコ無形文化遺産登録で海外客増
――近年、博多祇園山笠をめぐる環境はどう変わりましたか。
正木 博多祇園山笠は日本全国の33の祭りとともに「山・鉾・屋台行事」として、16年にユネスコの無形文化遺産に登録されました。それを受けて昨年は見にきていただく方が増えましたし、今年も大勢のお客さんがいらっしゃることを期待しています。今年は追い山の15日が日曜日、翌日は祝日ですから日程的にも恵まれていると思います。参加者、お客さんとも非常に多くなりますから、いつにも増して盛り上がる山笠になるでしょう。
――海外からのお客さんも増えましたか。
正木 そうですね、完全に把握するのは難しいですが、例年山笠には約300万人のお客さんが訪れるといいます。そのうち1割程度が海外のお客さん、という割合ではないでしょうか。昨年も、九大の留学生さんたちから「山笠のことを教えてほしい、説明を聞きたい」という申し出をいただきました。日本の伝統文化に興味をもってもらう方が増えるなかで、山笠に関心があるという方もどんどん増えているのではないでしょうか。
――そういう方々に、山笠の楽しみ方をどう伝えていますか。
正木 山笠には、さまざまな楽しみ方があります。壮麗な飾り山を眺める「見る山」、集団山見せなど「楽しむ山」、そして追い山で「熱くなる山」。それぞれ場面によって楽しみ方が違うので、なかなか一言では語れません(笑)。
――実際に山を舁く楽しみは、また格別でしょう。正木さんは山笠に『のぼせて』何年になりますか。
正木 私は今年で53歳ですが、生まれたころから父親に抱かれて山笠に参加していましたから、言ってしまえば山笠に関わって53年になります。本格的に参加するようになったのは、12歳からです。12歳になると、「若手入り」という儀式を経て、正式に参加できるようになります。そこから数えると、40年になります。参加するだけならまた別かもしれませんが、私のように山笠の振興会の役員までやってしまうと、もう仕事よりも山笠のほうが……となってしまいますね(笑)。
――若手入りとは、どういう儀式なのでしょうか。
正木 若手入りを終えると、大人としての扱いを受けるようになります。それまではあくまでも子ども・お客さん扱いです。
親が中学生になった息子を連れて、一升瓶を持参し、町内の総代に「今日から若手入りさせていただきます、よろしくお願いします」と挨拶をされます。それが終わると、もう親は一切タッチしない。「この町内に子どもを預けるけん、しっかり育ててください」と山笠に関する一切を任せます。
山笠で特徴的なのは、たとえ年齢や社会的地位がどうであれ、山笠に入った順番が先かどうかで上下関係が決まることです。極端にいえば、昨年若手入りした中学生と今年から加わった40歳がいたら、中学生のほうが山笠では格上になります。非常にシンプルで、わかりやすいのではないでしょうか。この人間関係のなかで、地域のこと、社会のことについて、さまざまな勉強ができます。
山笠のなかで学んだことは、一生の財産になります。ここで勉強したことは、将来就職した際にも役に立つと思いますよ。(つづく)
【文・構成:深水 央】関連キーワード
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