日台相互理解のさらなる深化を模索する!(後)
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学生たちとの座談会を終えて、山本幸男氏、清水則之先生と記者の3人は同じ台湾大学構内にある台湾大学日本研究中心(センター)に主任の林立萍教授を訪ねた。林教授は座談会に参加した王劭宇君の担当教授であり、「台日学生会議」もサポートされている、日本研究センターは台湾での日本研究の学際や大学間の垣根を越えた拠点として、2014年2月から活動を開始した。台湾では歴史的に日本語研究が盛んだったが、社会科学・人文科学分野での日本研究は遅れていた。その遅れを取り戻し、台湾における日本研究の最新かつ最大の拠点となるのが同センターの目的である。
翌6月8日には、東日本大震災に題材をとった小説 『アリガト 謝謝』(講談社)の著者、台湾在住30年の木下諄一氏の講演会が同センター主催で行われた。台湾大学日本語文学系教授 日本研究中心主任 林立萍氏
台湾における日本研究の最新かつ最大の研究センター
――お忙しい中、お時間をいただきありがとうございます。まず、台湾大学日本研究中心(センター)について教えていただけますか。
林立萍氏(以下、林) 日本研究センターは2013年11月に発足、実質的な活動は翌14年2月から開始しました。今の国際化社会が抱える諸問題に関心を寄せ、それに応えるテーマを研究し、社会との連携を図ります。また、台日の実質的な関係促進に貢献し、その持続的発展のために、とりわけ次世代研究者の育成に務めています。
同センターは私の前任者である徐興慶先生(元台湾大学日本語文学系教授・日本研究中心主任、現在は中国文化大学(台湾)外国語文学院院長)が当時台湾大学の教授であった辻本雅史先生(京都大学名誉教授、元台湾大学日本語文学系教授、現中部大学(日本)副学長)の協力を得て創設されました。私は2代目になります。台湾では歴史的に日本語研究は盛んでしたが、社会科学・人文科学分野での日本研究は遅れていました。
その遅れを取り戻し、台湾での日本研究の最新かつ最大の研究センターとなることを目指しています。名古屋大学、京都大学、関西大学などと交流提携をした
――具体的な組織、活動はどのようになっていますか。
林 組織は、台湾大学文学院院長、台湾経済人、山室信一京都大学人文科学研究所教授などを中心とした9名の諮問委員(監督役、相談役)、辻本雅史中部大学副学長を含む台湾の学術関係者からなる6名の執行委員と山本幸男氏など2名の外部支援アドバイザーで構成されています。大学側の承認を得て私が主任を務めています。
日本研究センターの目指す目標は、台湾大学および台湾における日本研究の拠点であり(研究)、次世代日本研究者の育成(教育)です。台湾の文脈に沿った日本学構築、すなわち台日相互理解のさらなる深化のためにさまざまな活動を行っています。
今まで行ってきた活動の柱は大きく分けて下記の5つになります。
(1)国際学術交流―学術交流協定調印、大学院生共同発表会、国際学術シンポジウム「名古屋大学『アジアのなかの日本文化』研究センター(2014.2)」「京都大学人文科学研究所(2015.3)」「関西大学東西学術研究所(2015.3)」と交流協定を締結しました。
(2)学術・教育活動―全国大学院生ワークショップ、学術講演会2018年には「第五回台湾大学・名古屋大学院生合同発表会」(6月)や「介護をめぐる国際シンポジウム」(11月)が開催されます。
(3)教育事業―日本研究単位学程、奨学金制度、研究助成金制度
(4)経済界との連携―台日経済人と学生との交流、台日文化交流教室
(5)出版事業―日本学研究叢書、日本事情教科書
運営資金は台湾企業と日本企業で賄う予定であった
――かなり、精力的に活動されていますね。今後の課題は何かありますか。
林 台湾大学の日本研究センターは大学が承認したれっきとした組織ですが、大学側から特別な予算をもらっているわけではありません。台湾大学のなかには、このような組織は約80あり特別なことではないのですが、やはり多額の運営資金を賄っていくことは大変です。2014年発足時、運営資金は台湾企業と日本企業で賄う予定になっていました。
現状、日本側は(1)台北市日本工商会、台湾日本人会会員からの寄付金、(2)台湾における日系企業からの個別寄付金(3)台湾在住者(日本人)の個人献金、台湾側は、(1)台湾企業の個別寄付金(個別事業毎への寄付金)、(2)台湾在住者(台湾人)の個別献金、(3)科技部(台湾国家科学委員会)研究助成金獲得 などに頼っています。しかし、なかなか思うように集まりません。
台湾における日本研究センターは、台湾大学以外に、最初に設けられた「国立政治大学當代研究中心」を初め約12の大学に設けられています。しかし、どこも台所事情は同じだと聞いています。私は台日相互理解のさらなる深化を実現するめには、「日本研究中心(センター)」の存在は必要であり、かつとても重要であると考えています。本学でも、その責任を全うできるように引き続き尽力していくつもりです。日本の読者の皆さまにも、ご理解とご支援のほどよろしくお願い申し上げます。
(了)
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