春の息吹を求めて リハビリ登山(後)

 4月2日(水)、再びショウジョウバカマの花を求めて蛤道を歩くことにし、仲間に声をかけた。今回は男性会員Yも参加し、男女6人のメンバーとなった。先輩Tと女性Hは不参加であった。同じルートでショウジョウバカマの群生地へと向かう。今回も、他の登山者に出会わず、静かな山だった。群生地を花の株を踏まないように進むとショウジョウバカマが檜林のなかでたくさんの白い花を咲かせていた。

 満開のものもあれば咲き始めたものもある。思わず感動の声を上げる。撮影に夢中になり、花の株を踏まないように注意しながら、各自スマホやデジカメで花の撮影を始めた。

ショウジョウバカマを撮影中の筆者
ショウジョウバカマを撮影中の筆者

    群生地のエリアは100m四方にもおよぶ。脊振山系では、「ショウジョウバカマといえば羽金山」と言われるように全国的に有名になっている。他の群生地も同じであるが、杉や檜と共生している。直射日光より木洩れ日を好む植物のようだ。そしてほとんどの群生地が季節風の当たる北斜面に群生し、玄界灘から吹き付ける季節風を耐え忍んでいる。

ゴールデンウイーク頃に咲くツクシシャクナゲも同様である。脊振山系では樹木の花を含め、ほとんどの植物が玄界灘方面の北斜面に自生している。湧き上がってくる水を含んだ雲が植生を生んでいるようにも思う。

 撮影に満足し、ショウジョウバカマに別れを告げ、蛤岳山頂へと向かった。山頂直下なので歩いて5分で山頂に着いた。黄砂の影響もあるのか、蛤岳山頂の岩(真ん中から2つに割れ、貝の蛤を思わせる岩)からの展望はかすんで有明海がわずかに見える程度だった。

 山頂の広場で休憩した。筆者は腰に負担がかからないように石の上に腰を下ろした。直接地面に座ると回復途中の腰が痛むからである。

 今回も、メンバーが持参した食べ物が回ってくる。気配りがうれしい。集合写真を撮って山桜の庭園に向かった。樹齢100年を超える山桜の大木が数本ある。その下でわれわれは、のんびりと歓談したり昼食をとったりしている。今年は2月から3月にかけて寒さのせいか山桜の花の兆しはなかった。

 ここから登山口へ下りの山道を歩いた。クロモジの林が続く山道を歩くが新芽が1本も出ていない。歩いている途中、後輩Sが耳にかけていた補聴器を落としたことに気づいた。Sと同期のHの2人が山道を戻って探しに行った。30分たって戻ってきたが見つからなかったという。23万円もする高価な補聴器だと聞いたので、筆者を残し、再度4人が探しに行った。1時間して仲間たちが戻ってきたが、肌色の小さな補聴器は見つからなかったという。

 2日後、補聴器を再度探しに筆者と後輩2人で蛤岳山頂からすべてのルートを歩いたが、やはり見つからなかった。後輩はようやくあきらめがついたようだ。

 林道を戻る途中にタラの芽の木が10本たっているのを見つけた。新芽を取ろうとしたが、道具を持参していなかったので、眺めるだけで車に戻った。

 4月17日(木)、後輩2人を誘い、ショウジョウバカマと山桜を見に蛤岳周辺を歩いた。時間の経過とともに樹木の新芽が出始めていた。そしてクロモジが幹の小枝から花を咲かせ始めていた。

 クロモジの花はとんがり帽子の花をつける、咲くととんがり帽子だらけで賑やかだ。香木でもあるので貴重な樹木でもある。

 今回はショウジョウバカマがたくさん咲いていた。すでに時期を過ぎ、白い花からだいだい色の花に変わっているものもある。ショウジョウバカマは開花を終えるとだいだい色から茶色に変わり、種を遠くへ飛ばそうと茎を5倍から10倍近く伸ばす。植物の知恵である。

 場所を変えながら30分ほど撮影した。ここから少し歩くと蛤岳の登山道に出る。すると男女の声が聞こえてきた。6人ほどのシニアのグループだ。このグループにあいさつをして山桜の方に向かった。緩い登山道を10分も下ると大桜の場所へ出る。

 山桜のもとへ向かい、3人は空を見上げた。しかし山桜の花は1つも咲いていなかった。登山口近くの山桜は咲いていたのに、山中にあるすべての山桜は一輪も咲いていなかった。

 ここで30ほど休憩した。後輩Hがポンカンを、Sがお菓子を振る舞ってくれた。話も尽きたので山を下ることにした。脊振山の分岐で、再び先ほどの男女のグループと出会った。蛤岳周辺を周回したようだ。年齢を聞くと我々とほぼ同じだった。

 緩い下山の山道も歩きやすい。花を咲かせ始めたクロモジの群生地を通り、登山口へと戻った。林道を車で下る道筋に何本もの山桜が花を咲かせていた。大桜の場所より標高が低く、陽あたりが良いせいもあるのだろう。

 集合した大杉の場所へと戻り、後輩たちと別れた。帰路、福岡市早良区の奥地の板谷峠付近は山桜が満開だった。明るい太陽のもとで遅咲きの紅梅も輝いていた。

 その後、後輩Sは50万円を出して補聴器を新調したらしい。紛失にこりたのか山には付けて来なかった。

 蛤岳歩きは、筆者にとって絶好のリハビリ登山となった。登山口まで車を利用でき、岩場もなく静かだし、距離も短く歩きやすい。これからも季節の花を求めて何度も歩いてみたい。

 ショウジョウバカマは植物学的にはツクシショウジョウバカマです。脊振山系では白色のツクシショウジョウバカマがほとんどです。

山桜の元で仲間たちと 中央が筆者
山桜の元で仲間たちと 中央が筆者

(了)

脊振の自然を愛する会
代表 池田友行

(前)

関連キーワード

関連記事