2024年12月27日( 金 )

新たな競争のステージへ!デフレ経済の勝ち組『四強』(中)

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2代目・王者ダイソー、上場準備&IT化促進へ

 業界最大手で100円ショップ業態の生みの親「ダイソー」を展開する大創産業は1977年12月設立。直近の2017年3月の売上高は約4,200億円、国内だけで3,150店舗(17年10月現在)を擁し、現在は26の国と地域に1,900店舗(同)の海外店を展開する。2位以下をダブルスコアで引き離す業界の絶対王者だ。

 現会長・矢野博丈氏が矢野商店として個人創業したのが72年。当初からすべての商品を100円で販売するワンプライススタイルを導入していたが、このころはまだ業態名として「100円ショップ」が確立していなかったため、単に「雑貨店」という位置づけだった。ともあれ、ワンコインで掘り出し物を探す楽しさが人気になり、本社のある広島県からスタートして創業からわずか10年で九州から北海道まで拠点を築くまでに至った。

 当初は店舗をもたない移動販売方式だったが、集客力に目を付けたスーパーマーケットがテナントとして誘致するようになり、全国展開に拍車がかかる。そうして、87年に初めて「100円SHOPダイソー」を出店する。本格的なチェーン展開に着手したのはさらに4年後の91年からだった。

 その強さの秘訣はなんといっても商品開発力にある。現在、ダイソーでは約7万点の商品を扱っているが、その99%が自社開発のオリジナル商品。いまも、毎月最大700点の商品を開発し続ける。協力メーカーは45カ国、1,400社以上に上り、毎日100本のコンテナが運ばれてくるという。

 いまや、スーパーマーケットやホームセンターでもPB(プライベートブランド=自社ブランドによる商品)をもつのは当たり前の時代になったが、同社の場合、出色なのはやはり価格。すべての商品の仕入れ原価を100円未満に抑えなければならない。それでいながら、品質はもちろん、ほかの店にはないアイデアをもった商品というところが最大のミソだ。

 100円ショップの醍醐味は、単に日用品を安く買えるだけでなく、掘り出し物を探す楽しさ、わずか100円に詰まった工夫とアイデアに対する驚きと感動にあるわけだが、そうした基本コンセプトをつくったのも大創産業である。

 2位以下を圧倒する存在として業界に君臨してきた同社だが、今年3月、創業者で自ら陣頭指揮を執ってきた矢野博丈氏が会長に退き、次男の矢野靖二氏にバトンタッチしたのを機に、上場準備に入ったといわれる。上場後は、市場から調達した資金を基に、IT化の推進や海外展開の加速を進めると見られている。

「まじめ」なセリア、ターゲットは女性客

 2位のセリアは1985年設立。本社は岐阜県大垣市で、店舗は国内のみ1,506店(直営1,455店、FC51店、数字はいずれも2018年3月末現在)だ。創業者の河合映治氏は家業のクリーニング店を経て、100円ショップを1985年に個人創業し、2年後の87年に運営会社として三洋エージェンシーを設立(後に現社名に改名)。ながらく、業界3位をひた走ってきたが、2009年にキャンドゥを抜いて以来、2位が定位置になった。店名は、かつて「ワン・オー・オー(100)」と称したが、現在は社名と同じに合わせた。18年3月期決算では年間売上高1,591億1,400万円(前期比9.5%増)、経常利益165億円(同8.4%増)と業績も好調だ。

 その特徴を一言で表すと「まじめ」だという。そもそも、「セリア」という社名からして、イタリア語で「まじめな」を意味する形容詞。他店では、「100円ショップ」と言いながら、数百円程度の商品も品ぞろえしているのに対して、あくまで愚直に100円均一を貫く。商品の仕入れも、安ければ良いというのではなく、取引先との関係を重視する。

 河合社長がかつて明かしたところでは、取引企業は従来から関係の深い160〜180社で固定し、むやみに増やさない方針。とくに取引が多く、全仕入れの85%を占める50社とは、毎年2回、オーナー同士で直接面談し、互いの信頼関係を確認し合うという。

 業界のなかではIT投資にも熱心で、04年、「POSシステム」を業界で初めて導入し、POSデータを活用した発注支援システムの開発にも着手している。女性をターゲットにした店づくり、商品を志向。ゆったり買い物できる清潔で落ち着いた店内演出と、デザイン性の高いファッションアクセサリー雑貨などの展開に注力する。

(つづく)
【太田 聡】

 
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