昨今M&A事情(7)21LADY~乗っ取られた「洋菓子のヒロタ」の運営会社(後)
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洋菓子のヒロタを復活させて名を高める
広野道子氏の名を高めたのは、洋菓子のヒロタの早期再生に成功したことだ。
同社の創業は1924(大正13)年。廣田定一氏が大阪市の自宅で洋菓子製造を始めた。戦後の48年、神戸市・元町通に元町店をオープン。49年(株)洋菓子のヒロタを設立。69年に東京・吉祥寺に出店して首都圏に進出。73年にフランス・パリに出店した。洋菓子のヒロタのシュークリームは全国ブランドとなった。
だが、直営店での販売にこだわったこと、季節感のある商品や消費者のニーズにマッチした商品を出せなかったことから販売不振に陥った。洋菓子販売の不振を補おうと喫茶店やパスタ料理に多額の資金をつぎ込んで傷口を広げた。2001年に50億円の負債を抱えて民事再生法を申請して経営が破綻した。2002年6月、21LADYは洋菓子のヒロタを100%子会社として、広野道子氏が社長に就任。再建に取り組み、05年7月、洋菓子のヒロタは民事再生手続きを終結。広野氏は、洋菓子のヒロタを復活させた女性起業家として、広く名が知られるようになる。
10年3月には、北欧のインテリア雑貨チェーンのイルムスジャパンを子会社化し、広野氏は社長に就いた。日本郵政の社外取締役として活躍
サイアム社は21LADYに対して、社外取締役3名の追加選任と監査役2名の選任を求める株主提案を行った理由について、「21LADYは、8期連続で赤字であり、会計監査人からいわゆる『GC注記』(引用者注・倒産する可能性が高い企業)がなされるなど、深刻な業績不振にある上、このままでは業績が好転する見込みもないためです」としている。
その資料によると、11年3月期から18年3月期まで8期連続の当期赤字である。18年3月期の売上高は前期比6.5%減の25億5,700万円、当期損益は2,300万円の赤字だ。「洋菓子のヒロタ」の営業利益は8,200万円の黒字だが、イルムスの1,900万円の営業赤字が足を引っ張った。
広野社長や投資ファンドへの相次ぐ第三者割当増資で何とか債務超過を回避してきたが、新しく大株主に登場してきた投資ファンドのサイアム社に、広野社長は「経営者失格」の烙印を捺されて解任された。
経営は火の車なのに、広野氏は対外活動に積極的。女性が活躍する社会にふさわしい人材として、社外取締役に引っ張りだこだ。郵政民営化した巨大企業、日本郵政の社外取締役に16年6月に就任。今年6月22日の株主総会では賛成96.67%で再任された。
また、NECのシステム構築会社NECネッツエスアイの社外取締役に17年6月に就任。今年6月21日の株主総会では賛成96.1%で再任された。
しかし、広野道子氏は創業した21LADYの株主総会では解任されてしまった。華やかな対外的な活動に浮かれて、足元の経営を疎かにした報いを受けたのである。(了)
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