不祥事件相次ぐ第一地銀のきらぼし銀行(番外編)
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東京きらぼしフィナンシャルグループ(以下、FG)は2018年5月1日、東京TYFGから商号変更。傘下に東京都民銀行・八千代銀行、新たに新銀行東京が加わり、3行が合併してきらぼし銀行となった。東証一部への上場もはたし、順風満帆のスタートを切った。
しかし、それも長くは続かなかった。2件の不祥事件が立て続けに発生したのだ。(1)定期預金証書偽造による横領事件
石神井支店に勤務していた36歳の男性行員が2016年5月から2018年5月にかけて、顧客の預金から不正に現金を引き出し横領していたことが発覚。
◆この行員は石神井支店および上石神井支店それぞれの法人顧客1社、当該法人に関係する個人客2名より普通預金から定期預金の作成依頼を受け、総額3億7,500万円の定期預金証書を交付していた。
◆7月2日、顧客から預金の解約の申し出を受けた銀行が確認したところ、定期預金証書を偽造し、3億7,500万円を横領していたことが判明したのだ。行員は失踪しており、きらぼし銀行は7月8日付でこの行員を懲戒解雇している。(2)妻殺害容疑で逮捕
7月18日、きらぼし銀行の行員が妻殺害の容疑で千葉県警に逮捕されるという不祥事件が立て続けに発生。
<問われる銀行体質>
きらぼし銀行に2件の不祥事件が発生したが、妻の殺害については新しく経営統合に参加した新銀行東京の行員によるもの。この不祥事件は弥谷鷹仁容疑者の個人的なトラブルによるものであるが、八千代銀行員による定期預金証書偽造による横領事件は、銀行の管理体制そのものが問われる大きな問題である。きらぼし銀行の継承銀行は八千代銀行だからだ。
金融庁に届け出はしているものの、和解などで表面に出ないケースも多々あると思われるが、地銀における最近の不祥事件をピックアップしてみた。【表1】を見ていただきたい。
<この表から見えるもの>
◆横領金額が一番多いのは八千代銀行(現・きらぼし銀行)の男性行員(36歳)で3億7,500万円。2年間にわたり横領が続いていたが、もし顧客から定期預金解約の申し出がなければ発覚はさらに遅れることになったと見られる。ここで問題となるのは偽造の定期預金証書がどのように発行されたかだ。白地の定期預金証書は重要印刷物であり、役印も役席が管理する。また月に1度は目を変えて定期検査をすることになっている。手書きの定期預金を渡したのであれば理解できるが、そうでなければ、きらぼし銀行の定期預金証書の管理がいかにずさんであるかを証明している。
・次が中国銀行高松支店の男性行員(31歳)で約2億円。発覚するまで2年余り経過していた。続いて関西アーバン銀行の男性行員(34歳)で1億7,000万円。一部定期預金証書を渡しており、未返金の約9,200万円は銀行が弁済している。
◆男女で見ると男性行員が圧倒的に多い。しかも20代から40代の働き盛りの行員の横領が多いのがわかる。一生が台無しである。北越銀行の男性行員は本部勤務の60歳。営業店勤務時代からの親しい顧客の定期預金を10年以上にわたり横領していたことになる。いつ発覚するかハラハラドキドキの毎日だったのではないだろうか。
◆九州地銀18行のうち、福岡中央銀行2件。福岡銀行1件。福岡銀行は女性行員(38歳)が両替機から現金を抜き取り、後日返済する手口。ただ行内の抜き打ち検査で発覚しており、内部の管理体制はしっかりしているといえるのではないだろうか。
<まとめ>
11件の不祥事件のうち、第一地銀は7件、第二地銀は4行。2回の不祥事件があるのは第一地銀では筑波銀行と七十七銀行で、第二地銀は福岡中央銀行。
地銀は日銀のマイナス金利政策の影響や人口の減少による地域経済の縮小もあり、厳しい収益環境が続いている。今後、経営統合により経費の削減をしないと生き残れない環境にある。ただ、この不祥事件を詳細に見ると、第二地銀の行員の横領金額が多いのが目に付く。今後、経営統合を進めていく場合、相手の管理体制のレベルを真剣に精査することも大切な要因となるのではないだろうか。【(株)データ・マックス顧問 浜崎裕治】
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