2024年11月15日( 金 )

企業のクラウド戦略を支援する アプリケーションレイヤーでシェア拡大(中)

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クラウドエース(株) 代表取締役CEO 吉積  礼敏  氏

クラウドサービスで影響力を増すGoogle

 ――システム開発現場では、1つのOS環境に複数のOS環境をつくり出すコンテナ技術が浸透しているようですが、このコンテナ技術においてもGoogleはリードしているようですね。

 吉積 これまで、ヴイエムウェア(VMware, Inc)に代表されるリナックスやウィンドウズのOS(オペレーションシステム)を仮想化して、ハードウェアから切り離すという手法が一般的でした。しかし、その上のレイヤーで仮想化するコンテナ技術は、処理にかかる負荷や時間が少なく、セキュリティーが保たれた環境を構築することができます。開発担当者と運用担当者が連携して開発するデブオプスにおいてもコンテナのほうが優れています。Gmailなどはもともと、コンテナ技術をベースにつくられています。

 そのコンテナを管理する仕組みをコンテナオーケストレーションといいますが、クーバネティス(Kubernetes)というGoogleがベースを開発したオープンソースがあります。今では、デファクトスタンダード(事実上の標準)になり、AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)やマイクロソフトでも採用しています。

 ――クラウドサービスを提供するアマゾン、Google、マイクロソフトのシェアはどうなっていますか。

 吉積 日本だとアマゾン4、マイクロソフト2、Google1という割合だと思いますが、Googleがどんどん追い上げています。

 ――Googleは、クラウドサービスの中心になるような技術でも主導権を握ろうとしているのですか。

 吉積 クラウドサービス全体の中心とまでいくと少し言い過ぎかもしれませんが、仮想化していくインフラの中核を担うサービスとしてコンテナがあって、オープンソースはGoogleが一番詳しいことから、サービスとしてGoogleが一番良いと評価をいただくようになってきました。

 ――Googleの他社と比べて特徴的な部分はどのようなところですか。

 吉積 一番大きいのは、Googleが世界最大のデータを扱う企業であるということです。そこから、プロダクトアウトで製品を出してきているのです。世界中のオープンソースというか、YouTubeやGoogleマップ、カレンダー、Gmailなどフリーのツールなどで大量の情報を無料で集めて、それをベースにさまざまなシステムをつくっているわけです。

 技術的に検索も含めてGoogleはエンジニアリングの会社なので、ページランクに代表されるアルゴリズムが最初は注目されました。しかし、実際はYouTubeを流すために海底ケーブルを世界中にもっていますし、データセンターからハードウェアやOS、ミドルウェアなどもすべて自前でつくってしまいます。それは、検索のレスポンスを1ミリ秒でも早く返すことで、彼らの広告売上がアップするからです。

 他社は、データセンターをいくつも買って、ボリュームディスカウントで安くして使ってもらおうという考えが基本で、自前でつくろうとはしないでしょう。

きめ細かな対応でシェア拡大を

 ――それぞれの世界観があって興味深いですね。これは、セキュリティーに関してもいえそうです。

 吉積 世界中の人がインターネットに触れる時間が長ければ長くなるほど、儲かるというビジネスモデルが完全にできていますから、Googleほどインターネットの世界を安全にしたいと思っている会社はほかにありません。ですから、セキュリティーに関してもGoogleは圧倒的にスゴイですね。

 Googleは、今、検索の会社ということになっていますが、2022年にはクラウドの会社になると技術のトップクラスの人は言っています。

 ――プラットフォーマーに対して、力をもちすぎだというような意見もありますが・・・・・。

 吉積 プラットフォーマーが力をもちすぎるといっても、正直、どうにもなりませんよね。勝てないところで勝負しても仕方ないので、もっと上のレイヤーで勝負した方がいいと考えています。たとえば、アプリケーションのレイヤーまでクラウドプラットフォーマーが提供するのは、きめ細かい対応が必要になることを考えると難しい。当社は、そういう泥臭いところまで含めてしっかりできる体制を整え売りにしていますし、ここのレイヤーを世界中に広げようという思いでやっています。

 スピーチAPIだけをとっても、音声をテキストにできるというだけだと、エンドユーザーには届かなくて、APIだけでもエンドユーザーは使えません。会議の議事録をつくるシステムや音声をテキスト化するということをシーンに合わせてカスタマイズしてあげる必要があります。それをつくっていくというのを私たちがやるということです。そうやってシェアを広げていけばいいと思っています。

(つづく)
【文・構成:宇野 秀史】

<COMPANY INFORMATION>
代 表 : 吉積 礼敏
所在地 : 東京都千代田区大手町2-6-2 日本ビルヂング12F 1239
設 立 : 2016年11月
資本金 : 3億150万円
売上高 : (17/11)3億円

<プロフィール>
吉積 礼敏 (よしづみ・あやとし)

徳島市出身。愛光学園高校を経て1999年、東京大学工学部精密機械工学科卒業。アクセンチュアに新卒で入社し、主にインフラ領域を担当。大規模システム構築プロジェクトを歴任後、退職して吉積情報を創業。Googleのクラウド・エンタープライズ領域のコンサルタント。GoogleAppsのCertified Deployment Specialistの資格を日本人として初めて取得。2016年、クラウドエース(株)を設立。

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