支持率5割台に急落の文在寅政権 対日強硬政策もトーンダウン(後)
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「見果てぬ夢」
文大統領は「2日前の南北高位級会談によって、板門店会談で約束した秋の首脳会談が合意された」と述べ、「私は我が国民の心を集めて平壌を訪問する」と表明した。彼は「韓半島問題は我々が主人という認識が大変重要だ」と述べた。これは文大統領の持論である「韓半島運転者論」に力点を置いた発言だが、周辺国家(米中日露)と核装備国家(北朝鮮)に挟まれた韓国の大統領として、その舵取りは容易ではない。
文大統領は、板門店宣言で合意した鉄道、道路の連結は、今年中に着工式を行うのが目標だと述べた。文大統領は「北東アジア6カ国と米国が参加する『東アジア鉄道共同体』を提案する」と言及した。しかし、これは歴代韓国大統領の「見果てぬ夢」であり、北朝鮮という核武装国家に対峙する米国の支持なしでは実現できない構想だ。光復節のご祝儀演説レベルである。
米国のトランプ政権の第1目標は、11月の中間選挙での勝利だ。対中、対欧経済政策、中東政策での強硬展開とは裏腹な対北柔軟戦術もその一環である。米トランプ政権は北朝鮮の非核化意思には疑いをもっているのが実情であり、中間選挙が終わると一転して対北強硬姿勢に転ずる可能性が高い。
ブラッドリー・バブソン元世界銀行顧問は16日、米政府系ラジオのボイス・オブ・アメリカ(VOA)のインタビューで、「文大統領の発言は対北朝鮮制裁を維持したり強化すべきと考えるホワイトハウスのボルトン国家安保補佐官のような米政府内の官僚を明らかに怒らせるだろう」と述べた。
深刻な雇用問題
「雇用惨事の悲鳴、まだ聞こえないのか」。18日の「中央日報」社説は、いつになく激烈だった。「これ以上落ちる余地は残っているのだろうか」と強い危機意識を表明した。
前日に発表された統計庁データによると、失業者は7カ月連続で100万人を上回った。7月の新規就業者5,000人は、韓国経済が正常だった当時の新規就業者30万人の60分の1程度にすぎない。社説は「世界景気の好調で主要国では人手が不足しているが、韓国だけが深刻な状況を迎えている」と文政権の経済政策を批判した。
文政権は最低賃金の16.4%引き上げという果敢な政策を取った。これは諸刃の刃のポピュリズム政策である。その結果、卸小売業や宿泊・飲食業、賃貸サービス業などの脆弱業種だけで、19万1,000人が職を失った。来年にはまた10.9%引き上げが予定されている。さらに製造業の就業者が12万7,000人減少し、労働市場の軸となる30~40代の就業者が23万9,000人減るという恐るべき事態が出現してきた。
このような論調を反映して文大統領への支持率も急落傾向にある。
支持率が就任後最低値の55.6%となったという世論調査の結果が16日、発表された。大統領就任直後の17年5月に記録した81.6%と比較すると26.0%ポイントも下落した。職業別では労働職・自営業で支持率の下落幅が大きかった。この職群では、否定的な評価が肯定的な評価よりも多かった。政権与党である「ともに民主党」の支持率も最低値37.0%となった。30%台に落ちたのは現政権では初めて。野党は、自由韓国党20.1%、正義党13.3%、正しい未来党7.7%、民主平和党2.7%となった。
(了)
<プロフィール>
下川 正晴(しもかわ・まさはる)
1949年鹿児島県生まれ。毎日新聞ソウル、バンコク支局長、論説委員、韓国外国語大学客員教授、大分県立芸術文化短大教授(マスメディア、現代韓国論)を歴任。現在、著述業(コリア、台湾、近現代日本史、映画など)。最新作は「忘却の引揚げ史〜泉靖一と二日市保養所」(弦書房、2017)。関連記事
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