2024年11月29日( 金 )

学生ローン地獄(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 社会的信用が低い人や、低所得者層を対象とした高金利住宅ローンである「サブプライムローン」。このサブプライムローンが住宅バブルの崩壊により、2008年に世界金融危機を発生させたのは記憶に新しい。

 現在、問題となっているのは、学生ローンだ。学生ローンの急激な増加が米国をはじめ、数カ国で発生し、その行く末が懸念されている。これまで学歴と将来の収入には相関関係があり、質の高い教育に対する需要はとても高かった。すなわち、お金を借りてでも、教育に投資をした方が有利な時代が続いていた。しかし、社会状況の急激な変化により本来、夢をかなえ、将来を保証してくれるはずだった学生ローンが、若者にとって人生の重荷になっている。今回は現在の学生ローンの実態を探ってみたい。

 学生ローン、もしくは奨学金は、経済状況が厳しい人のために用意された仕組みだ。償還の必要がない奨学金から、大学卒業後、利子をつけて返済しなければならないものまで、種類はいろいろだ。しかし、韓国では若者の失業率が高く、就職したとしても、非正規職が多く、ローン返済が大変厳しい状況になっている。米国でも学生ローンが雪だるま式に増え、総額は1兆5,000億ドルを上回り、今年史上最高額を更新している。

 フイナンシャルタイムズ紙は、米国の学生ローン総額は今年8月現在で1兆5,200億ドルになったと報じている。2006~2007年の学生ローンの総額が5,000億ドルだったのに、その後、3倍以上に膨らんだことになる。つまり、学生ローンが急激に増加し、学生たちが借金漬けになったのは、この10年のことのようだ。

 米国では人口あたり4人中1人にあたる4,470万人が学生ローンを抱えているという。その内訳を見ると、学費の高い私立大学の学生の75%が、平均400万円くらいの学生ローンを抱えているという。これはとても深刻な数字で、ブルキンス研究所の分析によると、2023年になると、学生ローンの40%以上は返済が滞るかもしれないと指摘されている。

 韓国は、どのような状況だろうか。韓国では大学を卒業した人と、大学を卒業していない人との待遇の差が大き過ぎるため、韓国人は無理してでも大学に入ろうとする。ところが、韓国の大学の学費はとても高い。学費のことは親だけでなく、本人にも大きな負担になる。韓国は、大学までは親が面倒をみるという暗黙の了解がある社会で、親に経済力があまりない場合、学生ローンなどが利用される。それで、大学の学費負担が大きな社会問題になっていて、韓国政府は2012年から奨学金の予算を大幅に増額している。それにも関わらず、どういうわけか学生ローンなどの負債は減っていない。政府の奨学金を受け取った人は、昨年52万人だったが、今年は60万7,000人に増加している。もちろん、このような政府支出は財政を圧迫することになる。韓国政府は奨学金の支払いに6年間で18兆ウォンを注ぎ込んでいるものの、20代の負債は6年間で逆に88%も増加している。

(つづく)

(後)

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