自民党「統合医療研究」~医療モデルと社会モデルの観点から普及推進(後)
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未病対策で「現代版医食同源」を普及
また、自民党は17年5月に、未病産業の振興策などを盛り込んだ「一億総活躍社会の構築に向けた提言」を発表しているが、ここには統合医療の考え方が色濃く反映されている。自民党・一億総活躍推進本部がとりまとめた提言は、推進本部の下に設置された、(1)女性活躍・子育て・幼児教育、(2)産婦人科・小児科医師不足偏在問題対策、(3)65歳以上のシニアの働き方・選択の自由度改革、(4)IOHH(Internet of Human Health=高頻度で簡単に検知可能なデータヘルス関連技術)活用・健康寿命革命、(5)若者の雇用安定・活躍加速、(6)誰もが活躍する社会をつくる―の6つのプロジェクトチームの検討結果を踏まえたもの。
女性が安心して子どもを産み・育てられる環境づくりでは、産科医がおらず分娩取扱医療機関がない、無産科2次医療圏を解消するため、産科医療機関への財政支援拡充の検討を提案。産科医師の養成数増加を目標に、「医学部入学時の産科医枠・小児科医枠の導入」「医師の初期臨床研修において再度、産科・小児科研修を必修化」「専門医の養成に医師が不足している都市部以外の地域での研修を組み込む」などの実施を求めている。
高齢者向けの対策(IOHH活用・健康寿命革命)では、自立支援を充実させ、健康寿命の伸長を図る観点から、「特定健診受診率向上のための保険者インセンティブの強化」や「かかりつけ医による受診勧奨」「生活習慣病・認知症のバイオマーカー・リスクマーカー等の研究・開発」などを提案している。未病対策では、政府に食ヘルスケア産業を振興する司令塔を設け、生産・加工・販売の各局面を視野に、研究・開発・普及を推進し、国内外に「現代版医食同源」を広めるとしている。
「食による健康増進・予防効果」については、19年以降に新SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)に位置付けて、機能性成分の研究開発支援、生活習慣病やフレイルなどに関する未病バイオマーカーの開発支援。さらに機能性食品の普及では、栄養ケアステーションでの管理栄養士によるアドバイス、医療保険者による保険事業での活用を促進するとしている。
一億総活躍社会と地方創生につながる
日本や中国では古くから医食同源という言葉があるように、健康的な食事で病気を防ぐという予防医学の考え方がある。近年では、栄養のバランスがとれた食事、適度な運動が疾病予防として提唱されているが、統合医療的な視点では、文化芸術に触れて心を豊かに保つなどして、人間が本来持っている自然治癒力を高めるという考え方もある。
近代西洋医学は、病気を敵とみなし、それを排除しようとする考え方を根底に、病原微生物を叩く、がんを切り取るなどの治療技術を発展させ、それなりに成功を収めてきた。しかし、その反面では、敵ではない生活習慣病、敵がわからない原因不明の疾患、さらには精神的な要素が関与する疾患などについては、先端医療をもってしても治癒せしめることができない状況にある。加えて対症療法は、高度な先端技術、医療機器、薬剤それぞれの研究開発に莫大なコストがかかり、臨床応用される際には患者負担が高額になってしまうという難点がある。
統合医療議員連盟の鴨下一郎会長は、「統合医療推進のために」とする報告書のなかで、「地域のコミュニティを再構築して健康長寿社会を実現させることが課題となっている。統合医療は、地域包括ケアシステムの1つの手段であり、政府が進める一億総活躍社会と地方創生にもつながる」と述べ、医療モデルと社会モデルの2つの観点から統合医療の重要性を訴えている。
(了)
【取材・文・構成:吉村 敏】関連記事
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