くるり九州ひたすら歩く旅~九州一周、完歩を目指す(15)
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国道3号線と10号線をひたすら歩く“九州一周完歩”の旅。走行距離は実に833kmにおよぶ。週末を利用し、実際に現地に赴き九州の大動脈を歩く。真夏の太陽が照り付ける日中を避け、深夜から明け方にかけて歩くというまさに体力勝負の旅だ。
今回は、諸事情のため棚上げしていた鹿児島県と宮崎県の県境である10号線を歩く。目の前に立ちはだかるのは、この旅の3大峠となる「亀割峠」。福岡からの移動距離の長さ、気象条件、悪路と最も過酷な旅の1つとなった。8月26日(15日目)
JR都城駅からJR田野駅まで~30.6km今回は大きな決断を強いられることになる。それは都城市から宮崎市までのコース選択だ。このまま国道10号線を歩くのか、それとも国道269号線を歩くのか・・。なぜ269号線かというと、ここから先の10号線は鉄道から遠く離れており、都城駅まで帰るのにかなりの時間を要するからだ。対する269号線は高速宮崎道に近く、日豊本線に沿っている。計画が立てやすいのは269号線の方なのだ。ホテルの従業員に話を聞くと「10号線はスピードを出すトラックが多いので危険です。269号線の方が歩きやすいでしょう」とのこと。よし、269号線を通ることに決めた。
夕方、ひとまず車で移動し、JR田野駅に駐車した。なぜ田野駅かというと、都城駅から30km前後の駅であることと、高速道路のICに隣接しており、利便性がいいからだ。深夜から朝方にかけて高速道路を利用し福岡に帰るにはベストな位置にある。到着駅に車を止めて列車でスタート地点まで戻るUターン。鹿児島で散々使った方法である。
都城駅からナイトウォークを開始。歩き出して気付いたのが都城市郊外は商業施設が多く、駐車場には車が多く止まり、人の往来が多いということ。さらに歩いて隣街である三股町の中心部を抜けると広い田畑が広がっていたということ。歩きやすい歩道が多く、夜でも視線の遠くに山が見える。あの山々を越えて宮崎市に向かうのだ。途中JR山之口駅に寄り休憩。無人駅だが269号線と隣接し、しかも0時近くの列車がある。ここから田野駅に向かうと楽なのだろうが、歩かなければならない!先を急ぐことにする。
山之口IC、SAを越えたら269号線に沿っていた日豊本線としばしの別れ。JR青井岳駅まで2時間、さらに、そこから田野駅まで2時間の合計4時間の旅である。だが、その4時間がこれまでで一番長く感じることになった。
まずは中間点となるJR青井岳駅を目指す。緩やかな登り坂がずっと続いていた。街灯は少ないが、歩道が広くて歩きやすい。雲が時折月を隠し、さまざまな虫の鳴き声が聞こえ、自分の足音とリンクする。遠く離れた川のせせらぎが聞こえてくる。
そうこうするうちに、ようやく青井岳駅に着いたが、国道から少し離れているために、寄らずに歩きながら肌着の交換と水分補給を行う。右手に見える施設が青井岳温泉らしい。ぜひ行ってみたい温泉の1つだ。
橋を渡ると「宮崎市」の標識が。ついに宮崎市に入ったのだ。しかし、ここからが過酷な旅の始まりとなった。奥深い山のなかだけに街灯がほとんどなく、暗闇の中、手元にはハンドランプが1つと自身の存在を車のドライバーなどに認識させるためのオレンジの点滅器のみ。もちろん歩道はない。
深夜なので自動車の往来はまばら。もはやガードレールさえない状況だ。人工物といえば道路のみ。聞こえてくるのは、虫の鳴き声、急流の音、風でこすれ合う草木の音だけ。獣らしきものが目の前を駆け抜けるが暗闇のため、はっきりとした姿は見えない。
月光を期待するものの、背の高い木々が頭上に覆い被さっており夜空は見えない。しかも、開けたと思ったら雲で月が隠れており、見えるのは足元を照らすランプの明かりのみ。こんな時間に、こんな山道を歩くなんて、時折通る車のドライバーたちはどう思っただろうか・・。歩くこと約1時間。里に下りるとちらほら畑や民家がみえてきた。街の明かりは、やはりありがたいものだ。山の麓から市内を通り、ペースを上げて田野駅に到着。休む間もなく田野ICから一路福岡へ。次からは再度10号線を南下する旅となる。田野駅とはしばしのお別れだ。
(つづく)
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