2024年12月24日( 火 )

九州地銀の2019年3月期 第2四半期(中間期)決算を検証する(1)

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 九州地銀(18行)の2019年3月期の第2四半期(中間期)の決算が出そろった。
 上場会社は、東証から45日以内に決算発表することを上場ルールとして求められている。

◆九州地銀(含むFG・FH)で東証一部・福証に上場しているのは、ふくおかFG(3行)、西日本FH(2行) 、九州FG(2行)、佐賀銀行、大分銀行、宮崎銀行、十八銀行の11行となっている。
・東証一部に上場しているのは北九州銀行を傘下にもつ山口FGの1行。
・福証に上場しているのは、筑邦銀行、南日本銀行、宮崎太陽銀行、福岡中央銀行、豊和銀行の5行。
・九州地銀(18行)のうち、非上場の銀行は佐賀共栄銀行だけとなっている。
 【表1】を見ていただきたい。

この表から見えるもの

◆第1四半期の決算をトップで発表したのはふくおかFGで2018年7月31日。2016年2月26日、十八銀行がふくおかFGと経営統合し、1年後に同じ長崎県を地盤とする傘下の親和銀行と十八銀行が合併すると発表。しかし公正取引委員会が「独禁法上問題あり」として承認せず、2年以上無期延期となっていた。
 暗礁に乗り上げていた経営統合に光明が差したのは、金融庁の有識者会議だった。有識者会議はこの案件を詳細に分析し、4月11日に報告書を提出。それによると、「急速な人口減少で複数行が競争を持続できない地域があり、経営余力があるうちに統合を認めるのが望ましい」とし、また、「公取委が審査する現状を改め、金融庁も含め総合的な競争政策のあり方を検討すべきだ」と提言。要約すると、(1)金融のことはその道の専門家に任せるのが良い。(2)金融界にはそれぞれ専門家がいる。(3)いくら上手でも素人(公取委)は専門家にはかなわない。とし、「餅は餅屋に任せる」の諺があるように、「金融庁が銀行の合併を審査すべき」との結論だった。

◆さらに、政府は6月15日に公表した未来投資戦略案のなかで、地方の人口減など経済社会構造の変化に対応した競争政策のあり方を検討し、19年3月までに結論を得ると明記したからだ。

◆これに対して、元財務事務次官で2013年3月に公取委委員長に就任した杉本和行委員長は、独禁法の番人としての原理原則を貫き、金融庁が是認する「ふくおかFGと十八銀行の統合」に猛反発し、安易に首を縦に振らなかった。 
・杉本委員長は7月18日の会見で、地銀の再編に関連し、金融庁側が公取委の審査手法に疑問を投げ掛けた報告書を出したことについて、「競争を阻害する合併について、金融庁がどう考えているのかという見解がまったくなく、納得できない。納得できないものについては対応しきれない」と一蹴。

 ところが、その2週間後の8月1日、新聞各紙は「公取委、統合承認へ」と一斉に報じた。どういう背景があるのか。
 ふくおかFGと十八銀行が「他行への債権譲渡で、問題視されてきたシェアの高さが緩和された」とする報告書を公取委に出したことを受けて、「公取委はこれで競争環境が維持できると判断するだろう」との“落としどころ”を見つけ、各紙は「go」サインを出したとみられる。リークがあった可能性も否定できない。 金融界では、「首相官邸が公取委をねじ伏せた」と受け止める向きも多い。
(Business Journalより抜粋)

<まとめ>
 柴戸隆成ふくおかFG社長(兼福岡銀行頭取)は、2018年6月13日に開催された(一社)全国地方銀行協会の第69回「定時会員総会」において、会長に就任。その影響力は大きい。
 ふくおかFGが第1四半期の決算を2018年7月31日に公表したのは、十八銀行との経営統合を公取委に承認させるためだったのではないだろうか。
 はたして翌8月24日、公取委は1,000億円の債権譲渡によりシェアが70%程度に下がるとして、承認したのだ。ふくおかFGの第2四半期の決算公表日は、11月7日にトップで公開した十八銀行から5日後の11月12日だった。【表2】を見ても、ふくおかFGがトップで決算を公開したことはない。2018年7月31日は、ふくおかFGと十八銀行にとって、記念すべき特別の日となったのではないだろうか。

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(つづく)
【(株)データ・マックス顧問 浜崎裕治】

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