2024年12月23日( 月 )

【訪米レポート(3)】玉城県知事が訪米日程を終了~「このままではデッドロック状態」と警告

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 訪米日程を終えた玉城デニー沖縄県知事が、取材に応じた。現地時間14日の模様と、囲み取材の様子をお伝えする [ニューヨーク/横田一]

<14日のワシントンでの面談の概略>

(1)緊張した表情で国務省での面談(国務省と国防総省の担当者が同席)に乗り込んだ玉城知事だが、その面談直後に「普天間代替施設建設(辺野古新基地建設)の姿勢は揺るぎない、変わらない」という声明が出た。日米両政府の「辺野古が唯一の解決策」という頑なな姿勢は、今回の訪米でも変わる兆しがなかった。

(2)ただし玉城県知事は、軟弱地盤問題(土砂を投入して埋め立てても「欠陥基地」にしかならない恐れがあること)をしっかりと国務省や国防総省、連邦議会事務局に伝え、「(軟弱地盤を強化する)地盤改良には知事権限が必要。このままではデッドロック状態(処理が進まない)になるのは確実」と警告を伝えた。米国政府がすぐに従来の姿勢を変えなくても、「本当に大丈夫なのか。日本政府(安倍政権)の説明を鵜呑みにして大丈夫か」という問題意識が芽生えた可能性は十分にある。

(3)しかも、玉城県知事は上院と下院の議員とも面談している。そこでは「議会対策で協力する」という好意的な発言をデイビッド・プライス下院議員(民主党)から引き出した。そのため、米国議会でも辺野古問題が取り上げられる可能性が出てきた。日米両政府が頑なな姿勢を取るのに対して、日米の野党と沖縄県が連携して追及する態勢構築の足がかりとなった。

(4)玉城県知事は、国務省面談などワシントンでの活動を「雪が降る前の曇り空」に例えたのに対して、大学講演や国連幹部と面談したニューヨークを「快晴」と例えた。それでも寒さ対策が必要と強調するなど、再訪米を含めて精力的に動くと宣言。準備不足が懸念された早期訪米であったが、アメリカ世論や政府、議員に訴えたことで、辺野古新基地阻止に向けた足がかりをつくるのに成功した。

<訪米日程終了後の、玉城県知事の囲み取材(現地14日)>

 ――面談の内容について。

玉城県知事 辺野古の新基地反対を訴えて過去最多得票で当選した経緯や、普天間飛行場の代替施設の埋立承認取消の流れについても説明をさせていただきました。その取消については、政府は国民の権利や利益救済を目的とした行政不服審査法の主旨を違えて、撤回を取り消したということについて触れさせていただきました。このままでは裁判に移っていくことも考えられるのですが、私は司法による解決ではなくて、対話による解決を求めているという話もしました。
 これに対して昨日、安倍首相とペンス副大統領との間で、「自由で開かれたインド太平洋の促進に関する日米共同声明」において、北朝鮮問題を重視している、日米で緊密に連携をしていく、辺野古が唯一の解決策であるということに言及がありました。

――連邦議会議員とのやりとりは。

取材に応じる玉城デニー県知事

玉城県知事 沖縄における民主主義の根本の問題であるという話をしました。国務省や国防総省の方にも同じ話をしたのですが、つまり沖縄には基地を押し付けられているという矛盾があり、日本全体で引き受けるべきなのに引き受けていない現実がある。沖縄県民は辺野古新基地に反対を示しているのに一顧だにしない。沖縄における民主主義は違うものなのか。沖縄県民が不満を高めている状況にあっては、日米の安定した同盟関係が、ましてや沖縄における基地負担軽減について県民の不安が払拭できません。そのことを訴えるために私たちは来ましたという話をしました。

――ヒロノ上院議員とプライス下院議員との話については。

玉城県知事 (ハワイ選出の)ヒロノ議員については5分ぐらいしか時間がなかったので、知事に就任したお祝いとハワイには沖縄県民の流れを汲む方がたくさんいらっしゃいますので、「これからも協力していきたい」ということ(をお話ししました)。ヒロノ議員からは、「新知事に就任をして大きな大変な問題があることは認識しています」というお話がありました。プライス議員はノースキャロライナの方で、沖縄に関しての知識はそれほどないけれども「我々が議会で協力できることがあれば、もちろん協力していきたい」という内容の話でした。

――(朝日新聞)知事はこれまで日米両政府と沖縄県による三者協議を求めていて、「対話による解決のチャネルをつくる」ことを申し入れたいとおっしゃっていた。国務省と国防総省に伝えたのか。それに対しての回答は。

玉城県知事 はっきり伝えました。しかし国務省からは確たる返答はありませんでした。国防総省も同様でした。

―― (朝日)国務省の面談直後に「辺野古が唯一」という考えは変わらないという声明が出ました。知事は政策変更を求める立場での訪米で、アメリカ側の意志の固さという部分を事前の予測に比べてどのように受け止めていらっしゃるのか。

玉城県知事 従来のコメントを繰り返しているということだと思います。私は、かねてから「『辺野古が唯一』と言っている限り、デッドロックだ」と言っている。暗礁に乗り上げた船をどうやって動かすのかと。動かすためには動かす立場にいる人たちが(沖縄県と)話し合わないと動かないということをかねてから申し入れています。「辺野古が唯一」というコメントをすることは、まだまだ進んでいないと受け取った次第です。

――(朝日)今日の面談のなかで前進できたと実感をなさった部分はあるのでしょうか。

玉城県知事 知事としての考えを伝えられたことは、半歩ほど前進になると思います。だからこそ、その対話のなかから糸口を見つけていこうと。その根本的な問題は何かというと、沖縄における民主主義の問題だと。これはお互いに普遍的な価値観を共有できるのかということにもつながるので、日本とアメリカはこの問題の当事者であり、責任者であるということもはっきりと申し入れました。

――(横田)軟弱地盤問題については説明されたのでしょうか。欠陥基地になる恐れがあることを伝えても国務省は考えを変えないということなのでしょうか。

ワシントン入りした、玉城県知事

玉城県知事 伝えて細かい説明もしました。議会事務局にも同じような説明をしました。事務局はそういう事実があることを認めていましたが、それに対して返事をする立場にはないということだと思います。ただ国務省と国防総省(との面談で)は、私が説明をして、「これから先、(軟弱地盤を強化する)地盤改良などがあった時は知事の許可を求めないといけない。そうすると、その許可を出すのは知事自身なので、『この工事にはまだまだ時間がかかる』ことが十分に予測される」ということも言っておきました。それらについてトータルに国務省や国防総省からはコメントはありませんでした。

――4日間の総括を。

玉城県知事 日本とアメリカが時間をかけて議論をしてきた。「辺野古が唯一」という考えで結論が出て、進んでいるというコメントがアメリカ側から、とくに政府関係者から出ていたということがありました。他方で、この問題をアメリカ国民、そして沖縄の流れを汲む人たちには「アメリカも当事者である」ということを受け止めていただき、その世論をつくっていただきたいと話したことについては、非常に温かい感触を得たと思っています。

――(琉球新報)ニューヨークとワシントンを訪問されて、天気に例えると。

玉城県知事 ニューヨークは快晴ですね。ワシントンは雪が降る前の曇り空ですね。雪が降ると温かくなるのですが、降る前のほうが寒いですよね。そんな雰囲気です。

――(IWJ)国務省の声明が直後に出されたことについて、知事の訴えが蔑ろにされたという印象がある。

玉城県知事 それは一方的な既定路線でしょう。私は沖縄における民主主義が崩壊に向かう状況を説明させていただきました。つまり当事者である日米両政府が、沖縄における日米安保体制も揺らがせかねないと。不安定な状況をそのまま続けていくのは決して得策ではないということもはっきりと申し上げました。そのうえで、そういう声明を出してくるということは、やはり、まだ沖縄の認識がしっかりと受け取っていただけていない。あるいは、受け取ろうとしないと。

――(横田)日米両政府が頑なな姿勢であれば、日米の野党が連携して追及する、民主党下院議員と会われましたので、そういうお考えはありますか。

玉城県知事 さまざまな戦略から戦術を描いていくことは必要なことです。沖縄県は47都道府県の一地方自治体、県ですから、私たちができることは限られているかも知れません。そこにいろいろな分野の方々が加わっていただき、多くの県民のみならずアメリカに住んでいらっしゃる米国民の方々も、私たちと一緒に行動することは大きなうねりになると思うのです。その作業をつくることは、これからもいろいろなかたちでやっていきたいと思います。

――(横田)民主党下院議員が「(議会対策で)協力する」ということは、米国議会で質問する、辺野古問題を取り上げる可能性があるという理解でよろしいでしょうか。

玉城県知事 その可能性は十分あると思います。

――(横田)海兵隊の方と会えなかったのは残念ではなかったのですか。再度訪米をして会うということでしょうか。

玉城県知事 そうですね。私が海兵隊の方にもし会えるのであれば、「私は海兵隊員の息子です」と言えば、少しは……。

資料:国務省の声明(14日)
You may attribute the following to a Department of State Spokesperson:
  State Department Acting Deputy Assistant Secretary of State for Japan and Korea Affairs Marc Knapper and Acting Director for Japan in the Office of the Under Secretary of Defense for Policy Paul Vosti met Okinawa Governor Tamaki at the State Department on November 14.
  In the meeting, Acting Deputy Assistant Secretary Knapper and Acting Director Vosti conveyed the sincere appreciation of the United States to Okinawa for hosting U.S. military personnel and for playing a central role in the U.S.-Japan Alliance, which continues to be the cornerstone of peace, prosperity and freedom in the Asia Pacific.
They also reiterated the unwavering commitment of the United States to the construction of the Futenma Replacement Facility at Camp Schwab.

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