2024年11月30日( 土 )

半導体産業の新しい戦場となったファンドリービジネス(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 技術の発展とともに半導体はさまざまな産業で活用されるようになり、その需要は拡大しつつある。半導体は、まず回路が設計、デザインされ、その後いくつかの製造プロセスを経て生産される。しかし、半導体の製造をするには設備投資に天文学的な金額が必要となる。そうなると半導体製造に参入できる企業は、世界でも数社に限られてくる。

 半導体産業は莫大な投資と設備導入が前提になるので、需要と供給の不均衡が数年ごとに繰り返される。半導体産業は不況に耐え、かつ巨額の設備投資ができる企業のみが生き残れるという産業構造なのである。その結果、半導体産業は数多くの設計企業と少数の製造企業とで構成されている。

 半導体の設計に専念する企業はファブレスと言われ、アップル(米)、クアルコム(米)、ARM(英)などの企業が該当する。一方、生産設備をもっていて、半導体設計会社から外注委託生産を請け負う企業をファンドリーという。

 ファンドリービジネスは台湾企業が先行しており、TSMCという企業は、ファンドリービジネスのガリバー的な存在である。ファンドリービジネスは顧客から設計図面をもらって生産するというビジネスモデルなので、どうしても少量多品種がメインになる。さらに、顧客の秘密を守ることが大事なので、顧客との信頼関係が重要視される。近年、ファンドリービジネスは成長を続け、その将来性が見込まれ、韓国のサムスン電子とSKハイニックスも、ファンドリービジネスの事業強化を急ピッチで進めている。

 今回はファンドリービジネスの動向について取り上げてみよう。それでは、なぜ台湾企業がファンドリービジネスで先行するようになったのだろうか。1966年当時、台湾は人件費が安かったので、フィリップスとテキサス・インスツルメンツという外資系企業が台湾に半導体のパッケージング工場を設立した。これが台湾の半導体生産の始まりである。1980年には現在世界3位のファンドリーであるUMCが設立され、台湾の半導体産業は本格的な成長に向けて動き出す。

 その後、1980年代終わり頃には、TSMCを始め、設計会社、テスト会社などが続々と登場。台湾でファンドリーという新しい分野が開拓され、成功することになる。とくに、TSMCは携帯電話のCPUに当たるアップルのAP(アプリケーションプロセッサ)を製造することで、飛躍的な成長を遂げ、現在ファンドリーの世界市場の半分以上を占める断トツトップの企業へと成長している。

 それでは、ファンドリービジネスが注目される理由は何だろうか。半導体市場全体でみると、メモリの市場規模よりも非メモリの市場規模のほうが大きい。最近人工知能、IoT、自動運転などに注目が集まり、ファンドリー需要が大幅に増加している。なぜかというと、第4次産業革命の分野に全世界からさまざまなベンチャー企業が参入し、新たな製品が設計されているからだ。

(つづく)

(後)

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