半導体産業の新しい戦場となったファンドリービジネス(後)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏
メモリ市場が成熟期に入っている一方で、ファンドリービジネスは成長期に差しかかっている。最近の半導体業界のトレンドの1つに、半導体の自社設計が挙げられる。フェイスブック、Google、テスラ、アマゾンなどのグローバルIT企業は、自社で半導体を設計し始めており、ファンドリービジネスにとって、大きなプラス要因である。
そのような状況下、世界のファンドリービジネスの稼働率は、80%前後をキープしており、先端技術を適用した場合の稼働率は何と90%を上回っている。ファンドリービジネスの年間成長率は7.8%で、DRAM(7.3%)や、ナンドフラッシュメモリ(7%)より高く、有望な市場として見なされている。今年の上半期の企業ごとの市場シェアはTSMC(台湾)が56.1%、 グローバルファンドリー(米国) が9.0%、 UMC(台湾)が8.9%、 サムスン電子(韓国)が7.4%となっている。ちなみに、ファンドリー ビジネスの市場規模は、半導体全体の15.8%を占めている。
世界1位のTSMCは、7ナノ工程の量産に成功、アップルのほか、ファーウェイ、エヌビディア、 AMD、クアルコムなどの顧客確保に成功している。またTSMCは2015年と2016年に設備投資でサムスン電子につぐ2番目の巨額投資を実施している。サムスンは2016年に11億3,000億ドルを投資し、金額面ではTSMCを上回っているが、これは半導体全体への投資である。一方、TSMCはファンドリービジネスのみに2016年に10億2,490億ドルを投資しているのだ。
サムスン電子はメモリビジネスで蓄積した微細工程技術と量産技術を生かし、ファンドリービジネスにおける二匹目のドジョウを狙っている。半導体の生産工程のなかに、光で回路をつくる露光工程というものがある。回路の線幅が細ければ細いほど、チップのサイズが小さくなり、性能がよくなる。
サムスンは17年に10ナノの量産を開始し、今年10月には8ナノの工程が完了して微細化技術においてはTSMCをリードしていた。しかし7ナノでは、サムスンはEUVという新方式を選択し、量産時期においてはTSMCに遅れを取っている。ただ、EUV方式に成功すれば、サムスンはTSMCより有利になるとの専門家の指摘がある。サムスンはまず世界2位を目指し、ファンドリービジネスに巨額の投資を実行している。しかし、ファンドリービジネスは、メモリビジネスとは性格がまったく異なる少量多品種ビジネスなので、サムスンとはいえシェアを伸ばすのは容易ではないだろうとの指摘もある。それに、サムスンは設計と生産を同時に行っている企業なので、アップルのようなライバル企業は、ライバルをけん制する意味でも、TSMCを選ぶだろうとの推測もある。もう1つの脅威は中国企業の台頭だ。中国は当然、自国企業に委託するので、今後市場がどう変化するか予断を許さない状況だ。
(了)
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