2024年12月23日( 月 )

平成の時代とともにあゆんだ博多食文化の会 30周年記念晩餐会-「食の博多舞」

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 12月9日、ホテルオークラ福岡4F平安の間にて「食の博多舞」が開催された。30周年を迎えた博多食文化の会のメンバーが一同に集い、約400人を魅了した晩餐会の様子をリポートする。

名匠が魅せる食の舞

 開場と同時に、中洲の老舗 ニッカバー七島のアペリティフで歓迎された。“福岡のバーテンの父”と呼ばれる七島啓氏がバーカウンターで2人の娘さんとマティーニを振る舞った。ピアニスト岩崎大輔氏の奏でる音色が雰囲気を盛り上げるなか、約400人の参加者がマティーニを手に取りテーブルにつく。創業120年余の歴史を誇る花月堂寿永の和菓子が愛らしく食の始まりを告げる。

やま中大将・山中啄生氏

 司会者より、博多食文化の会の発足から30年の歴史が映像とともに紹介された。同会の世話役人であるメゾン・ド・ヨシダの吉田安政氏がステージで開会挨拶をした。長年にわたり博多料理人の社会的地位の向上を目指してきた吉田氏は「日本で一番おいしい街 博多」を宣言し、メンバーの料理人たちをステージへ招く。1人ひとりと名匠がステージへ上がるたび、観客の拍手が鳴り響いた。20人のそうそうたる顔ぶれが並んだ。

 博多の食文化を支えてきた和洋中の名店が手がけた自慢の逸品をコース料理で味わえるとは、なんとも贅沢だ。料理が運ばれている間、手がけた料理人に再びスポットをあて、その人柄や人生、店の歩みに触れることで、より味わい深いものとなった。また、和食には博多の日本酒、フレンチには福岡ワインクラブ西村氏とラタフィア吉村氏が選んだワインが注がれた。

 最大の見どころはステージ演出にある。やま中の大将・山中啄生氏が寿司を握り、吉田氏はフォアグラのソテーを器に盛り、ホテルオークラ福岡の総料理長・谷内雅夫氏が伝統の牛フィレ肉パイ包み焼きを切り分ける。名匠たちは舞うように料理を仕上げていった。最後のデザートを担当したチョコレートショップ・佐野隆氏はソースのフランベで炎を踊らせる演出をし、会場をおおいに盛り上げた。

ニッカバー七島・七島啓氏と2人の娘さん
ホテルオークラ福岡 総料理長・谷内雅夫氏
世話役人のメゾン・ド・ヨシダ吉田安政氏
サプライズで盛り上げたゴスペルチーム「NEW WINGS」

先代の思いを次代へ

 初代会長を務めた元福岡銀行専務・富重泰行氏の遺した言葉が紹介された―「食は文化のベースである。おいしいものがわかる人は、心優しい人であり、楽しい人である。優しい心が集い、楽しい時をともに過ごして『食』の文化が育っていく。その食文化を支えるのは料理人。だから1つのところに定住し、互いの交流を通じて腕を磨いてほしい」。―同会は、毎年チャリティーイベントも開催している。料理人が主となり、担うべき社会的役割を先代から受け継ぎ、その思いを次代へつなげていく。吉田氏は職人仲間をステージで紹介している間、笑顔を絶やさなかった。若いシェフたちも名匠とともにステージに立ち、ライトを浴びた。吉田氏の笑顔は富重氏の博多愛を伝承する喜びに満ちていた。宴は3時間半にもおよんだが、声を枯らしながらも会場の中心にいた吉田氏の姿は印象的だった。

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 博多食文化の会の名匠たちは、長年にわたり「博多の食文化」を育んできた。その自負を堂々と表現した晩餐会であった。一流の料理に舌は喜び、料理人の演出や多彩なエンターテインメントにより極上の時間を味わった。「食」によって人はつながり、豊かになる―平成のあゆみとともに30周年を迎えた博多食文化の会、今後の活動も期待したい。

【松本 悠子】

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(1)チーズ豆腐 うに ジュレ(ぶどうの樹)/明石焼き(八ちゃん堂)/(2)やきとり(藤よし)/(3)吸物 真蒸(博多廊)/(4)寿司(やま中)/(5)フカヒレ(華都飯店・頤和園・星期菜)/(6)フォアグラのソテー(ムッシュヨシダ)/(7)国産牛フィレ肉のパイ包み焼き 赤ワインソース(ホテルオークラ福岡)/(8)うどん(因幡うどん)/(9)デザート(チョコレートショップ)。
これらのメニューに加えてパンー今泉にあるブロート ラントの香ばしいバゲットが振る舞われた。

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