2024年12月23日( 月 )

【機能不全の文在寅政権】支持率低下し、大法院判決、レーダー照射に対応策なし

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 韓国・文在寅政権は発足二年目にして、「レイムダック」状態と揶揄され始めた。政権支持率は「不支持」が「支持」を逆転した。対日外交は戦時労働者をめぐる大法院判決に対応できず、護衛艦による自衛隊航空機に対する火器レーダー照射もあいまって、機能不全の「脱臼」状態にある。

 世論調査会社「韓国ギャラップ」が21日に発表した政権支持率は、前週と同じ45%だったが、不支持が2ポイント上昇して46%に達した。政権誕生後の昨年6月、支持率が84%もあった当時と比べると隔世の感がある。

これは経済政策の失政と強い連関がある。文在寅氏は、IMF金融危機を招いた金泳三元大統領と同タイプの「経済に弱い大統領」の1人だ。政権支持派のハンギョレ新聞(22日付)でさえ「歴代最悪の所得格差」と報道した。12月14日発表の失業率は3・5%であり、昨年比0.3ポイント上昇した。

 青瓦台は金正恩のソウル訪問を待望したが、空振りに終わった。北朝鮮の非核化意思を疑う米トランプ政権は、硬軟両様の戦術でコリア政策を駆使している。

 対日関係はいうまでもない。

1.戦時労働者をめぐる大法院判決
2.慰安婦合意の破棄
3.海上自衛隊旗(旭日旗)の掲揚自粛要請
4.韓国国会議員の竹島上陸

 上記に加え、韓国護衛艦による自衛隊機に対する火器レーダー照射という失態まで演じたのである。

 ここでは大法院判決をめぐって、日韓メディアで言及されてこなかった点について記述したい。
 新日鉄住金裁判の原告4人がどういう人物たちかという点だ。同判決をめぐっては、日韓請求権協定で解決済という日本側の観点ばかりが強調されるが、肝心の原告4人の労働実態に関しては、ほとんど触れられてこなかった。
 4人ともに「徴用」工ではなく「募集」に応じた労働者である。従って、うち2人(申千洙氏と呂運澤氏)が原告となって争った大阪地裁判決は、強制連行とは認めなかった。ソウルの記者会見に登場した李春植氏は1941年、大田市長の推薦を受け報国隊として渡日した労働者だ。彼も徴用工ではない。
 九州関係者にとって重要なのは、金圭洙という原告だ。
 彼については氏名すら明らかでなかった。最新の勝岡寛次氏の調査によると、彼は1943年1月に群山府の指示を受けて募集され、北九州の八幡製鐵所で働いた労働者だ。従って彼も「徴用」工ではない。その仕事は構内線路の信号所で線路を切り替えるポイント操作や、ポイントの汚染物除去だった。このような労働実態がどうして強制連行、強制労働の不法行為があったと認定できるのか。
 実は新日鉄側は「戦前の日本製鉄とは法的な連続性がない」として、被告適格を否定し、原告が訴えた個々の事実関係について、下級審の法廷で争わなかった。このため大法院判決は個別の事実関係の認定にあたって、原告の主張通りの事実認定を行ったのである。

 日本のメディアや政党(共産党)の一部には、「強制連行・強制労働」の言葉に恐れをなして、「人道的な措置を」云々とする者があるが、彼らはこういう陥穽には見て見ぬふりだ。
 韓国での提訴ラッシュは、原告多数が日本側ではなく、韓国政府を訴える事態が続出して、さらに混迷を深めている。韓国側は「2(両政府)+2(両民間企業)」のファンド形成で何とか打開策をというのが本音だが、同様な手法で妥結した慰安婦合意が、韓国政府の一方的な終了宣言で破棄されたことを知る日本側が、これに応じようとしないのは当然だ。韓国側は、自らが蒔いた種によって雑草が増殖し、動きが取れない状態なのである。

 レーダー照射問題も本来は、韓国側がミスを認めて謝罪すれば済んだ話である。
 ソウル新聞「ニュースサイト」(25日付)が珍しく的確な記事を書いている。海空域での偶発的な衝突を避けるための国際的な取り決めに韓国側は抵触していた、というのだ。やむを得ず火器レーダーを使用する場合、周辺空域にいる航空機に事前通報する必要があったのだ。このことは海自OBが指摘している国際的取り決めとまったく同じである。つまり専門家同士では、韓国側の失態とされる事態が明らかなのだ。韓国国防部と韓国メディアが、これを無理矢理に糊塗しようという経緯が明らかな事案なである。

 「大法院判決」「レーダー照射」をめぐる日韓紛争は、進展がないままに年越しになりそうだ。今年は日本側の強硬姿勢に対して、韓国側が「やりすぎだ」とクレームをつける珍しい展開になった。従来とはまったく逆の展開だった。

 昨年の「I・Bニュース・コリアントレンド」年末版で、筆者は金正恩が来年始めから柔軟戦術に出ると予想し、的中させた。
 さて来年元旦の「新年の辞」で、金王朝三代目は何を語るだろうか。
 私が金正恩なら、文政権批判を織り交ぜて、韓国側を牽制する。昨年は南北融和期だった。今年は揺さぶりをかけて、さらなる左傾化社会(米韓同盟の崩壊)作りを画策するのだ。その兆候はすでに年末の大学街や労働界で出始めた。
 正念場はこれからである。

<プロフィール>
下川 正晴(しもかわ・まさはる)

1949年鹿児島県生まれ。毎日新聞ソウル、バンコク支局長、論説委員、韓国外国語大学客員教授、大分県立芸術文化短大教授(マスメディア、現代韓国論)を歴任。現在、著述業(コリア、台湾、近現代日本史、映画など)。最新作は「忘却の引揚げ史〜泉靖一と二日市保養所」(弦書房、2017)。

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