検察の冒険「日産ゴーン事件」(19)
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青沼隆郎の法律講座 第20回
ますます謎が深まった司法取引、重大な違法収集証拠か
ゴーンが特別背任罪の容疑で再逮捕されたことで、世間が忘れようとしている重大な謎がある。それは本件事件の司法取引である。
特別背任罪はその性質上、個人的な犯罪であり、共犯者がいない場合もないではないが、報道された限り、共犯の存在、とくに、本件の被疑者協力者2名とされる秘書室長や担当責任者が特別背任罪の共犯者とはなりえない。しかもこれら2名の者がゴーンの特別背任容疑にかかる会社資料の提供を行ったのであれば、同意弁護人2名と検察は2名の被疑者協力者に、2名の被疑者協力者の嫌疑とは関係ない会社の重要機密の漏洩つまり、窃盗罪の教唆行為を行ったものといえる。そして、その結果として検察が入手した証拠一切は違法収集証拠として証拠能力が否定されなければならない。
今後の裁判でのゴーンの主張に注目する必要があるが、何よりも先にマスコミがこのような検察自体の違法行為についてその存否を含め、正しい判断ができなければならない。
ゴーンはなぜ釈放されないのか
ゴーンが語ったとされる情報が相変わらず小刻みにリークされている。本人の生の口からでた言葉を聞かないでたくさんの評論がマスコミに溢れていることに違和感を禁じ得ない。これが日本の民主主義の実相としたら、いかにも文明後進国である。
リークするのが検察であれば、世論の操作上、ゴーンをできるだけ世間の目から隔離し本人の口からの反論を封じるにこしたことはない。このような検察の捜査手法を許していいものであろうか。テレビで、町ゆく人の大部分はこのようなリークの結果、ゴーンを守銭奴で会社を私物化した極悪人と認識している。まさにゴーンの名誉は検察とマスコミによって失墜・毀損された。「呑舟の大魚は法網にかからず」というが、法網自体が名誉棄損の行為をリークという「汚い手段」で行っている。ゴーンの口から直接事件の真実が語られる日がきてほしい。無論、ゴーン自体が自分に都合よく真実とは異なる事実を主張するかもしれないが、それを聞くことによって、国民は真実を把握することができるのである。
一刻も早くゴーンを釈放して反論、名誉回復の機会を与えることが法治国としてあるべき姿である。
(つづく)
<プロフィール>
青沼 隆郎(あおぬま・たかお)
福岡県大牟田市出身。東京大学法学士。長年、医療機関で法務責任者を務め、数多くの医療訴訟を経験。医療関連の法務業務を受託する小六研究所の代表を務める。関連記事
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