九州全体の連携を図り、持続的な発展を支援(3)
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九州経済産業局 局長 塩田 康一 氏
人口減を前提とした施策が必要
―宮崎、長崎のように人口が急速に減っている地域では、産業を興しながら定着させていく対策が必要ですね。
塩田 日本における出生数は、多い時には、約270万人(1949年)でしたが、今は約95万人(2017年)と半分以下になっています。人口の減少は、全国的な問題ですから、全体が減るなかで、ある地域の人口を短期間で増やすというのは容易なことではないと認識しています。今までは、寿命が延びていたから全体として人口減少が緩やかでしたが、これからは本格的な人口減少社会に入り、地域の人口はどんどん減っていくと思います。地域によっては、高齢化率が45%と、50%に迫る勢いです。ですから、こういう地域では若者が出ていかなくても自然減が非常に大きい。それをカバーするだけの社会増(ほかの地域からの転入によって生じる人口の増加)というのはなかなか難しいわけです。
ですから、地域においては宮崎や長崎などのように若い人たちが就職や進学で出ていくのをできるだけ食い止めるということと併せて、人口が減っていくことをある程度前提としたうえで、生産性を高めるなど、地域社会を成り立たせていくという取り組みが必要です。
福岡は九州の「人口のダム機能」をはたす
―北部九州の場合は中国、東南アジアへの自動車や鋼材物も含めた輸出で輸入を上回っている地域です。今回のアメリカと中国の争いのなかで中国を始めとするアジア諸国への輸出が減る可能性はありますか。
塩田 可能性がないとはいえないと思います。直接的な貿易の交渉でどうにかしようというよりも、世界経済の景気動向が悪くなるとモノが売れにくくなる。そのような影響という意味では、懸念材料になるのではないかと考えています。たとえば、中国などでスマホが飽和状態になり半導体の生産が低調になるとか、消費や経済の伸びの鈍化などもあり得るとは思います。そういうことが一時的にはあるにせよ、全体的にはAIやIoTの普及で半導体の需要は伸びますから、中長期的には引き続き輸出で稼いでいけるのではないかとみています。
―九州では福岡への一極集中が進むなか、九州経済の牽引など都市福岡の役割についてはどうお考えですか。
塩田 人口が減少するなかで、ブロックごとに「人口のダム機能」をつくるべきだという話があります。九州でその一番の中核を担うのが福岡県だと思います。実際、九州6県から福岡に入ってくる人は多い。他方、福岡から東京に行く人は2,000人余いますが、こちらは減少傾向にありますから、そういう意味では、福岡が九州における人口のダム機能を一定程度はたしているといえるでしょう。また、福岡を中心に九州の元気を取り戻すということが期待されています。福岡は今、ベンチャーやITのクリエイティブ人材の集積などが進んでいますから、そういったことを引き続きやっていくということではないかと思います。
―おっしゃる通り、福岡には若手のベンチャーや起業家は結構な数がいます。
塩田 福岡は、全国平均よりも高い開業率、起業率を示しています。熊本がちょうど全国平均ぐらいですが、ほかの県は全国平均を下回っている状態です。
そういう意味では、福岡で頑張っていただいて、ほかの県でも福岡と同じようなモデルを展開していく必要があると思います。(つづく)
【文・構成:宇野 秀史】
<プロフィール>
塩田 康一(しおた・こういち)
1965年10月生。鹿児島県出身。東京大学法学部卒業後、88年4月通商産業省入省(大臣官房企画室)。2002年6月外務省在イタリア日本国大使館一等書記官、05年6月商務情報政策局環境リサイクル室長、11年7月製造産業局鉄鋼課長、12年6月中国経済産業局総務企画部長、14年7月内閣官房地域活性化統合事務局参事官、16年6月内閣府本府地方創生推進室次長、17年7月大臣官房審議官(産業保安担当)などを経て18年6月九州経済産業局長に就任。関連記事
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