筑波大キャンパスに新業態の店舗出店 これからのSM業態の先導に(後)
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(株)カスミ
今後のSMのあるべき姿
多くの人員を要するレジ部門は、支払いはクレジットカードと電子マネーですべてキャッスレスセルフレジにした。SM店舗はおそらく日本で初めてだ。今回は学生が主に利用することから、若い世代に抵抗感がなく、自由に使いこなせる可能性が高いと想定し導入を決めた。売場案内や操作方法を説明するアテンダントを1名配置しているが、チェッカーが不要となり、人件費を大幅に削減することができた。現金の管理が不要となり、その手間も省け、利用者にとっても精算時間が短くすみ、待ち時間の短縮化にもつながり利便性が大きく向上した。
人手を減らしてコストを削減し効率化する取り組みはレジ部門にとどまらない。発注を自動化し、商品の消費期限などの日付チェックもITを活用、部門の壁を取り払い、複数の仕事をこなすマルチタスクも導入した。その結果、省力化や効率化が実現、正社員は店長のみで、パート・アルバイトは7.75時間換算で10人となり、従来の店舗より大幅に人員を減らして店舗を運営できることになった。こうして、新しい試みに意欲的に取り組んでいるが、大学生の御用達店舗としていろいろな商品やサービスも提供し、便宜を図って需要を取り込もうとしている。
目立つのは学生生活をサポートするためのサービス機能の充実だ。買物だけではなくゆったりくつろいで時間を過ごしてもらうため、店舗の前にはテラス席44席、店内にはハンモックもある31席のイートインスペースを設けた。200坪クラスのスーパーマーケットでは異例の広さだ。FREE Wi-Fiが利用でき、地元の不動産会社が提供する部屋探しのためのセルフ不動産検索機、スマホ充電器シェアリングサービス「ChargeSPOT(チャージスポット)」を設置した。学生同士や教職員の親睦などを図るため、簡易キッチンを備えた8席の多目的スペースも設けた。店舗の外には宅配便ロッカーや自転車の無料空気入れスタンドを用意し、至れり尽くせりだ。
こうして大学生に対してさまざまなサービスを提供しながら、商品構成でも彼らのニーズに的確に対応し需要を確実に取り込もうとしている。とくに意識しているのが低価格。カスミのEDLP(エブリデーロープライス)「共感プライス」を全体の品ぞろえの半数近くにし、学生の懐具合に配慮している。
個食、食べ切り、簡便調理、即食といったニーズが強いことから、レンジアップアイテムや小容量、惣菜、弁当などの商品にも力を入れて展開している。店舗の近くにはスポーツ選手の住む学生寮もあり、ボリュームのある高カロリーの店内加工の弁当もそろえ、「ジャンボメンチカツカレー」は1,090カロリーで380円という安さだ。
ペットボトル飲料も豊富に品ぞろえし、コンビニと同じようにリーチインの冷蔵ケースで、500㎖サイズを中心に低価格で提供している。リーチインケースは、在庫補充の頻度も少なくて済み人時コストの減少にもつながる。中心顧客が主婦でないため、素材を提供する生鮮食品は、一般的なSMより、肉と魚は品ぞろえを絞り込んで近隣の店舗から商品を運び、店内では加工は行っていない。これも人件費の削減につながる取り組みだ。
青果は一定の品数を取り扱い、カット野菜といった簡便アイテムや小容量パックを充実させ低価格で提供している。ショッピングに楽しさを感じてもらうため、グミ、タブレット、キャンディ、チョコといった菓子のほかに、ナッツ、ドライフルーツ、の量り売りも行っている。また、筑波大学には世界各国から留学生、研究生、教員がおよそ2,000人いることから、輸入菓子やイスラム教徒向けのハラル商品も投入し、需要を取り込もうとしている。筑波大学の公式オリジナルグッズや茨城の名産品もコーナー化し、学生の帰省の手土産需要に対応している。
キャンパス内という極めて特殊立地だが、キャッシュレスに代表される新たな試みを導入しながら、コスト削減にも取り組み、ある意味、今後のSMのあるべき姿を追求しようとしており、大変興味深い店舗である。
(了)
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